ぼうけんこぞう

旅と冒険(回遊ともいう)の軌跡と映画

Ladakh④うわのそら

せっかく早朝に着いたのに、夕方までほったらかし? などと思うなかれ。レーは標高3500メートルの高地にある。
高度に関しては比較的問題のない体質の私ではあるが、それでもなんらかの影響が出るということは、前回チベットに行った時の経験上わかっている。また、高度4000メートルを越えるとすぐ「車から降りるのめんどくさい病」を患い
「あーーん、もの凄く行きたがっていた場所だったのに、なんであそこでちゃんと車から降りて写真撮らなかったんだ、自分!」
帰国してからホゾをかむハメになることも心得ている。
チベットへ行った時はネパールのカトマンドゥから、車で毎日、徐々に高度をあげていったのであって、今回のようにイキナリ3500メートルに飛行機で入ったことは皆無。4250mの高さがあるパンゴン湖で「車から降りるのめんどくさい病」を罹患しないよう、身体をまずは3500メートルの高度に順応させるのは何より大切なことなのである。

「車から降りるのめんどくさい病」くらいならまだしも、本格的に高度に負けてしまうとどうなるか。山酔いになるのである。
一般には「高山病」と呼ばれるものだけれど、病気でもないのに「高山病」と連呼するともっと病気になってしまうので、業界? ではこう呼ぶ。
山酔いとは低地から高地に移動した時に、気圧や空気中の酸素量の変化に身体が順応できず、さまざまな症状が出ることを言う。標高2500mくらいから起きるのが普通だが、普段海抜0メートル地帯などで暮らしている人の場合は2000m前後で起きることもある。以前、台湾の人とブータンに行ったら標高2300mのパロで相当山酔いしていた。小淵沢在住者に比べて、由比の住民は不利になろう(←なぜに、富士山周辺地方限定?)

山酔いの症状は人それぞれで酔ってみないとわからない。頭痛、吐き気、めまい、下痢、思考力の低下、食欲不振などさまざまだ。
予防と対策としては

  1. ゆっくり歩く。大声で叫んだり走ったりしない。かといって、じっとして動かずにいるのもダメ。
  2. 食べすぎない。アルコール、喫煙もひかえめに。睡眠薬の服用もひかえた方が良い。
  3. 呼吸は腹式呼吸。息は鼻から大きくゆっくりと吸って、口でしっかりと吐ききる。
  4. こまめな水分補給
  5. 首や頭をはげしく振らない

という感じだがツアーコンダクターの仲間内では「お風呂に入ると危険」というのも囁かれている。シャワーをさっと浴びる程度は問題ないけれど、バスタブにお湯をはってゆっくり浸かってしまうとテキメンに山酔いするらしい。

日本を夕方発って、そのままデリーの空港で約4時間半のトランジットでレーまで来たので眠いことは眠いけれど、チャイを飲んだあとは部屋で外の景色を見ながら深呼吸をしたり、ちょっと表の道まで出て歩いてみたりして、部屋でぐっすり眠ってしまわないよう身体を動かし続けた。

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レーの王宮からの眺め


迎えに来てくれたガイドさんとお昼ごはんを食べて、ナムギャル・ツェモ山にそびえる17世紀にセンゲ・ナムギャル王によって建てられたというレーの王宮に行ってみた。
チベットのラサにあるポタラ宮によく似ているというふれこみだったけれど、これまた「遠い感じ」で私の眼にはちっとも似ているようには映らなかった。
チベットのあの、慈愛と怨念、祈りと憎しみ、博愛と迫害と……なんだかよくわからないけれど色んなものが埃っぽい空気にとけこんで、いっしょくたに青空に昇華されていく”カラカラに乾きながら熱い”感じゼロなのである。

王宮の中にはパネルに貼られた各地のお寺の写真が、ぱらぱらと並べてあった。ぶらぶら見てまわると中にはタージ・マハールの紹介があったりして、ラダックだけの見どころを紹介をしているわけでもないらしい。
ウッタル・プラデーシュ州のタージ・マハールほど何度行っても感動する場所はないし、その裏にある王妃と王様のラブストーリーに続く哀しい王様の物語。どこをとってもドラマがあるのだと、ひとくさりこれをガイドさん相手に語ってしまい『君はお客さんで、ガイドは僕なんだけどなぁ』的視線を浴びる始末である。
だって、好きなんだもん、シャー・ジャハーン……とか言っている場合ではない。ガイドさんの気分を害したらいつだって旅は台無しなので、大人しくする。
要するにタージ・マハールを除いてはあんまり私の気をひかない写真がただ無造作に並べてあったわけなのだが、その中に1枚だけ
「あれ? これ、どこ? すごく素敵じゃない?」
という写真を見つけた。
「へミスのゴンパです」
教えてもらったけど
「えーと、どこ? それ? 今回連れていってくれるとこ?」
状態。
日本の旅行会社に「パンゴン湖にどうしても行きたいんですっ!」とすべて丸投げ後は、前日まで仕事をしてラダックへ飛んできてしまったので今回パンゴン湖以外どこがツアーに含まれているのか、オマケの部分はてーんで把握していないのだ。
ちゃんと日程表も貰っているのに、ものすごくダメなお客さんだ。
「今回のツアーには入っていません」
ああ、そうですか、そんならそれでいいですってなもんである。車から降りようと思ったらサングラスすっとばして、ガイドさんとドライバーさんに捜させたりとものすごく手間のかかるお客っぷりを発揮しつつ、このあとシャンカール・ゴンパとシャンティ・ストゥーパに連れていってもらった。

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シャンティストゥーパ




ガイドさんの名誉のために言っておくと、彼はシャンティ・ストゥーパもずっと一緒にぐるぐるまわって真面目に案内してくれたし、シャンカール・ゴンパでは展示物ひとつひとつ丁寧に説明してくれたのである。
覚えてる、どんなとこだったか、ちゃんと覚えてる!(←大変疑わしい)
うん、とても遠い距離を保ちつつ。
だけど、心はもう明日のパンゴン湖に飛んでいってしまっていて、ニュージーランドの事故で死にかけて以来人生自体がオマケの私にとっては、オマケの上のオマケな感じ。オマケに寒いので観光意欲全力で尻つぼみ。
あー、もう本当にごめんなさい、ガイドさん。「今日の日本人客、せっかく説明してんのに始終うわの空で地獄に堕ちろ!」って、ガイドさんの日記に書かれても反論の余地もありません……。

 

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シャンカール・ゴンパの中のミラレバ。たしか(←おいっ!)