ぼうけんこぞう

旅と冒険(回遊ともいう)の軌跡と映画

Ladakh⑤食べたら治らない

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午後からだんだと気温はあがってきていて、8℃くらいにはなっていただろうか。
観光後、レーのバザール(マーケット)を軽く歩いてみませんか? とガイドさんが誘ってくれる。せっかくなので連れていってもらったのだが、メインバザールのあたりはリノベーションのため大工事中。

車を少し離れたところで停めて、バザールに向かって歩き出したとたん、足元からにゅーんと突き出ていた鉄の棒に、着ていた長めの服の裾を引っかけてつまずいた。おっとっとという感じで前につんのめる。隣を歩くガイドさんは慌てて支えようとしてくれたが、間に合わなくて転んだ。
特にどこを怪我したわけでもなかったけれど、足元への注意を怠ってしまうとは……かなり疲れているのかもしれないと思ったので、バザールの散歩は早めに切り上げて6時前にはホテルへ戻った。
ホテルのマネージャーに夕食の時間をきかれたので、一番早い時間にお願いしたけれど20時。
インドは全般的に夕食の時間が遅い。大抵のレストランは20:00からだし、普通にインド人が夕食を食べているのは21:00前後のことが多い。

よく考えると、ほぼ丸二日ベッドで横になって寝ていないのだ。ちょっと強行軍すぎたかもしれない。
部屋のベッドにごろっと横になってみると「あ、これはマズい、絶対このまま目を閉じたら朝」な感じ。
明日、起きたらまたマイナス1℃でない保証はない。暖房もないなかヒンズー教徒の人の真似して朝風呂なんかに入った日には、間違い無く風邪っぴきである。意を決して起き上がり、お風呂に入って持参のドライヤーで髪を乾かしていたら、なんだかくらくらするような気がした。
夕食どうしよう? あと1時間、食事の時間まで起きていられる自信がなかったのだ。夕食パスしよう。
部屋の電話は繋がらないので、その旨フロントに行って告げねばならないが、髪はまだ乾ききっていない。タオルを頭に巻いてロビーをウロウロするのはどうかと思ったが、ここはインドなんである。そこらじゅうにシーク教のターバン巻いた人がいる国で、日本人がタオル頭に巻いていたって別にかまわない……よね?
というわけで、偽シーク教で急いで降りていって、今日は夕食いらないとネパール人のマネ-ジャーに告げると、ものすごく悲しそうな顔で「いったいなにがあったのだ?」と心配された。疲れているので夕食まで待てないと説明すると
「だったら夕食を19:30に準備するようスタッフに言うよ」
とまで言ってくれたものの、あと30分待つのもしんどかったのだ。
「ありがとう、でも食欲ないんだ」
わがままいったあげく、食べられなかったらもっと申し訳ないのでやっぱり遠慮した。
体調のすぐれない時は食べないに限る。昔は風邪を引いて身体が弱っている時に限って『食べないと治らない』的な強迫観念?から、よく考えると普段よりも食べていた……なんてこともあったけれど、食べものを消化するのには思ったよりも体力が要る。
私はめったにお腹を壊さないけれど、下痢をしているお客さんにお粥などを手配して良い結果になったためしがない。食べたくない、食べられないというお客さんには「かえってお腹を干した方がいいかもしれませんね」とか言うので、「あっさりとした対応をする人」と形容されてしまうのかもしれないが、身体が弱っているところにさらに食事を入れると回復のためのエネルギーが消化にとられてしまって逆効果になると思っているのだ。
具合が悪いと何も食べずにとにかくじっとして、回復を待つ動物達の行動は自然の摂理にかなっている。
私も動物の一種なので部屋に戻って大急ぎで髪を乾かし、めまいのようなくらくらを布団で押さえ込んで速攻で寝た。

カンの鋭いあなたは、もうすでに気づいていると思う。
観光中に注意散漫になってモノを落としてみたり、ずっとうわの空で意欲低下、バザールで転んだところから食欲不振、くらくらまで……疲れのせいもあるけれどこれが山酔いというモノなのである。
しかも、こうして自分で書いてみるとよくわかるが、お風呂に入ってから山酔いが加速している。走って階段を下りたのもダメである。お風呂に入ったらテキメンだと知っていても、二日ぶりだったし寒かったし、ターバンだったし……で、ついつい禁止事項を犯してしまうあたりが山酔いによる思考力低下にほかならない。


Leh_Ladakh