ぼうけんこぞう

旅と冒険(回遊ともいう)の軌跡と映画

Ladakh②結婚式は大イベント

踊り狂っているインドの結婚披露宴の様子を、何度か映画で観たことがある。実際に新郎が白馬にまたがって暗闇のなか町をウロウロしているのを見かけたこともあるが、それがなんなんだかよくわかっていなかった。

インドの結婚式はこんな具合。
招待客をリストアップして招待状を刷って……という普通なら新郎・新婦が行うようなことも、親が決めた顔も見たことのない相手と結婚するのが主流のインドでは親族の仕事。招待状もただ送るのではなく、親族がじきじきに届けに行くことが多い。
結婚式の部分になると、まずは親戚の女性が集まって徹夜で歌い踊り、新婦の兄弟が新郎に挨拶、新郎が全身うこんまみれになったり、親族の長から冠を受け取ったりという儀式が毎日日替わりでいろいろ行われ、親族だけで踊りまくる前夜祭へ。

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結婚式のパレード部隊、準備中。

結婚式の当日は、自宅から披露宴会場まで電飾ギラギラもしくはブラスバンドの行列とともに白い牝馬に乗った花婿が練り歩く夕方の行進からはじまり、踊りまくる披露宴があり、それが終わるとお坊さんが来て七回ぐるぐる回る結婚の儀式が行われ、その後は出席者みんなで会食。
結婚式が終わったら終わりかと思いきや、次の日もまた次の日も花嫁・花婿を囲んでゲーム大会……と、きいているだけで頭が痛くなる儀式と宴会の日々。
どれだけ簡略化しても1週間は余裕でかかるのだとは知らなかった。
この間、食事はいつも提供されるので出席者なら食べて、ブラブラして、また食べていればいいけれど、親族は料理や飲物の手配からカメラマン、照明さん、音声さんの三つ巴で常に行われる撮影の指示も出さねばならない。

正式に執り行うとしたら、はじめから終わりまで1ヶ月……んまぁ、そうかもしれないなとは思った。
生まれ変わっても7回同じ人と結ばれると信じられているだけあって、さすがにインドの結婚式はとんでもない大イベントだったのである。

こんなインドの結婚事情により、3人旅が急遽1人旅になってしまった私は正直途方にくれた。
ラダックへ向かう予定だった前日まで立て続けに仕事が入っていて、やれホテルだやれILPだと自分であれこれ考えて手配する時間がすでになかったのである。
というのも、同行する予定だった友人は旅行関係の仕事をしていて、あれこれ心配する私に
「大丈夫だって、全部こっちでやるから。ダメなら現地でなんとかする」
言っていたのでギリギリになれば動いてくれるのだとばかり思い、まる投げしていたからだ。
うん、インド人にまる投げは良くない。とても勉強になった。

というわけでドライバー、ガイド、ジープ、ホテル、ILPに至るまで
「出発まで日にちがないので手配できるかどうか……」
渋られつつも
「いやビザは持ってるんです、もう航空券も手元にあります」
で押し切って、日系の旅行会社の現地法人に委ねることにした。要は日本人にまる投げなんである。

懸案のILPであるが、そもそも私はとんでもない勘違いをしていた。ILPが私に必要なのは紛れもない事実だが、なぜ必要なのかといえば外国人だから。つまり、一緒に行くはずだった友人達はインド人なので、もともとビザと同様ILP取得の必要はなかったのだ。
日本人1名にインド人1名合計2名いれば大丈夫というのは初手から私の誤解であったが、依頼した旅行会社によれば現地の提携している旅行社でとりまとめるので1人でも手配可能とのこと。到着したら、迎えに来たガイドにパスポートを渡すだけで良くなった。

雪をいただいたヒマラヤの山々が近づいてきて、私を乗せた飛行機はかつてのラダック王国の王都・標高3500メートルのレーに吸い込まれていった。