ぼうけんこぞう

旅と冒険(回遊ともいう)の軌跡と映画

Dor

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ヒンディー映画「Dor」(2006)

配役:

Zeenat役:Gul Panag
Meera役:Ayesha Takia
Bahuroopiya役:Shreyas Talpade
実業家Chopra役:Nagesh Kukunoor(←監督)

ネタバレしない程度のあらすじ:

これでインディアのDorを参照。

小僧的視点:

インドのヒンズー教における未亡人の地位の低さを、この映画から垣間見ることができると思う。不吉な存在とされる未亡人には誰も触れようとせず、伝統的に未亡人は一切の装飾品を身に着けてはならず、いわゆる世俗的な楽しみごとから隔離された生活を一生強いられる。また、都市部と違って10代で親の決めた相手に嫁ぐのが一般的なラジャスタンだけにMeera(アーイシャー・ターキヤー)のようなうら若き未亡人には、こんな環境で死ぬまで生きていかねばならないのはつらすぎるであろう。
この映画で対比は行われていないけれども、これがモスリムとなると同じインドでも
少し話が違って来る。イスラム教では宗教的戒律で離婚が認められているし、妻を4人持てるというきまりごとももともとは未亡人救済のために設定されたもの。

今回の主人公である二人の妻のうち、モスリムのZeenat(グル・パナーグ)は相手の両親に反対されてもそれはそれという状態で結婚をし、働いているので夫が投獄されても暮らしていけるだけの収入があり、面識もなければどこに住んでいるのかもわからないMeeraをラジャスタンへ単身乗り込んで探し出そうとする。

夫の死亡により仕送りが途絶えたら電話1本かけることもままならなくなり、お菓子を食べるのに許可を得なければいけない未亡人Meeraとの強さの違いは明らかだ。これは当人の性格の違いだけではないはずだ。
ボリウッド映画にはよくパキスタンの女優さんが出演しているが、インドの女優さんよりもパキスタンシーク教の女優さんの方がよくいえばしっかりしているように見える。悪く言うと老けて見えるのだけれど……。

Zeenatはヒマーチャル・プラデシュの山村、Meeraラジャスタンの砂漠の中に点在するハヴェリ(邸宅)に暮らしていて、その景色や女性の立ち位置を含めた文化・宗教の対比がたまらなく興味深かった。
以前、ラダックのレーからデリーで飛行機を乗り換えてビハールに行ったことがあるのだが、チベット仏教徒と平らな顔のラダック人だらけのレーの
早朝の気温は-1℃だったのに、午後パトナの空港に着いたら42℃でサリーを着たインド人だらけで
「インド、でかっ」
と思ったのだが、まさしくそんな感じの違いである。(←どんなだよ)
私の好きな昔の安っぽいボリウッド映画(なんじゃそら)ではよく、スイスとかヒマーチャル・プラデシュの山をバックにヒロインがサリーをひらひらたなびかしてヒーローと踊るのがお約束事だったのだが、個人的にはあまり雪をいただく山の風景にはロマンを感じない。
いわゆるピーカンの青空と黄金色の乾いた砂、日干し煉瓦の小屋や壁画のあるハヴェリという風景を原色のサリーとヴェールの女性や派手なターバンを巻いた男性が横切るラジャスタン。女性の地位が底辺だと知っても、なぜか心惹かれてしまう。
友情でまとめしまって掘り下げが足りないという意見もあろうが、私はラジャスタンの広大さと美しさを感じことができ、旅心かきたてられる映像だと思う。

ロケ地
Shaitrawa Village (Setrawa)

ジョドプールの南、車で2時間ほどのところにある村。
Zeenatがジャイサルメールに建てた小屋という設定で、ここで変装の達人Behroopiyaと暮らしていた。

この村をめぐる玄人好み?のツアーもある。

ロケ地
Pokhran Palace (Pokhran)

Meeraの「未亡人の儀式」が行われたのがこのPokhran Palace。ポカランはラジャスタンのタール砂漠にある人里離れたところで、核兵器開発計画のための実験場だ。1974年5月18日、1998年5月13日の二回、インド初の核兵器地下100m以下の深さで爆発させる核実験が行われている。パキスタンとの国境に近く、人口密度が低いことからここが選ばれた。1974年の核実験はコードネームから微笑むブッダ (Smiling Buddha) と呼ばれ、核実験成功の際には「Buddha is smiling」 という電報が打たれた。

ロケ地
Umaidnagar Garh / Fort (Rajasthan)

Meeraの新居になる予定だったところ。
Umaidnagar (Fort) は、1760年にマルワール王国の首相Kavirajji によってに建てられた。ジョドプールから40 km、オージアン(Osian)から20Kmの距離
もともとは
Dhakai 村と呼ばれていたところをUmaidnagarという名前にしたのはThakur Ratan Singhの父親で、姉がH.H Maharaja Umaid Singhjiというジョドプールのマルワール王(マハラジャ)と結婚した時のことだった。

ロケ地
Kanodia Purohitan  (Pokaran)

ポカランからほど近いこの村に、Meera and Zeenatが出会うお寺のセットが組まれた。ここで2人の生涯にわたる友情が生まれた。

ロケ地
Mehrangarh Fort(Jodhpur)


Zeenatが手掛かりとなる Meeraと夫の新婚旅行の写真をもとに訪れたところ。

 

ロケ地
Chamera Lake  (Chamba, Himarchal Pradesh)

ZeenatがYeh Honsla という歌の中で見下ろしている湖。

 

ロケ地
Bhandal Valley  (Chamba, Himarchal Pradesh)

Zeenatが暮らしていた村。

 

この映画が観られるサイト:

https://einthusan.tv/movie/watch/7IIh/?lang=hindi