※理不尽なことは言っていないと思うが……「地獄に堕ちろ!」は言い過ぎだったと後日ちょっと反省した。
Ladakh① うそつきインド人は地獄に堕ちろ
JAB TAK HAI JAANという映画を観て以来、猛烈にラダックというか、レーというか、Anushka Sharma扮するAkiraが飛び込んだあのパンゴン湖に行きたくなってしまった。
インド人の友人達でもジャンムー・カシミール州に行ったことのある人はそれほど多くはなく、日本人では元祖「ぼうけんこぞう」で組成した旅仲間グループのメンバー・ば王氏がいくばくかの情報をくれたのみ。
とりあえず同行メンバーを募集してみたところ、私のほかにあと2人のインド人が手を挙げた。十分である。
パンゴン・ツォに行くにはILP(インナー・ライン・パーミット)と呼ばれる許可証が必要になる。ILPの有効期間は7日間、期間内であれば一度の申請で複数の地域のILPを取得することができるので、ヌブラ(カルドゥン・ラより北、トゥルトゥク、パナミック付近まで)、ルプシュ(ツォ・カル、ツォ・モリリ、ロマ付近まで)、ダー・ハヌー(カルツェより北西、ダー、ガルクン、バタリク、チクタンなど)ILPの必要なところは一週間以内にまわるようにすると効率がいい。
ILPはDCオフィスという役所で申請を行うが個人で申請すると面倒くさいので、現地の旅行社で代行申請をしてもらうのがいいらしい。申請をする時には2名以上のパスポートが必要になると書いてあったが、3人で行くので問題はなかろう。
また、ラダックのバスはスケジュールにかなり変動があり、前日には運行を確認しないといけないのだが、そもそもパンゴン・ツォへ行くバスは便数がとても少なく、普通は「ジープ」と呼ばれる4WDの車をチャーターする。それでも3人でチャーターすればドライバー入れて4名だし、ちょうどいいではないか。
ラダックへはデリー、スリナガル、ジャンムーなどから飛行機がレーに飛んでいる。デリーからは1日2~3便でジェットエアウェイズ、エア・インディア、ゴー・エアが就航している。国際線から乗り継ごうと思ったらゴー・エアはターミナルが違うのでとてつもなく乗り換えに時間がかかるので、実質2社のチョイス。調べてみるとやはり便数の多いインドの他の都市に比べると運賃も高めで、デリーから1時間ほどのフライトなのに片道4500ルピー(日本円で約8000円)だった。同じく1時間のフライトのジャイプール便ならば3000円程度で手に入る。
そして、大切なのは時期選び。人が多いとか多くないとか、雨が降るとか降らないとか、そういうことは私にはまったく関係ない。要は寒いか、寒くないかそれだけである。
「パンゴン湖に行きたい病」を発病したのは1月だったが、年間気温グラフを睨んだところ、1月の最低気温はマイナス20℃。気温7℃で人生すべてがイヤになる私にとっては、とんでもない温度だ。6月、7月、8月は最高気温が20℃以上になっていたので同行者と相談。7~8月は用事があるというので6月に決定。私は6月にほぼ1ヶ月の休暇をとった。
「ホテルどうする? ジープどうする? そもそもパンゴン湖へは日帰りで行く?」
ツアーコンダクターの仕事の合間をぬって、旅行日程を詰めようと何度も連絡するのだが、インド人達はのらりくらりとちっとも動かず。
しまいには出発まであと1ヶ月という5月になり、どうするどうするとせっついたら
「いとこの結婚式があるから、来月ラダックには行かれない」
言い出した。1人欠けてもILPは2人分のパスポートがあればいい。なんとかなるかと思った矢先
「友達のいとこの結婚式があって、実家に帰るのでラダックには行かれない」
残り1人からも断られた。
インド人、6月に結婚しすぎ!
である。
そもそもなんで、結婚式があるとひと月まるまる旅行に行かれないのだ? 自分の結婚式ならいざしらず……。
「なんで今頃そんなこと言う? 結婚式の予定が1ヶ月前に決まるのか?」
「友達のいとこってことは、親戚でもないじゃない。なんで結婚式に行くだけで1ヶ月まるまる旅行に行けないの?」
くってかかった私に、ふたりは
「また今度仕切り直せばいい」だの「6月とはいったけど、はっきり何日って約束したわけじゃない」だのと、わけのわからない言い訳をいっぱいしたため、『守れない約束をされるのが、なにより嫌い』な私の逆鱗にふれてしまった。
「うそつき大っ嫌い! うそつきとは友達でいられない」
「うそつきは地獄に堕ちてしまえ!」
まで言って大喧嘩。私の剣幕におされ、最後にはやっと
「ごめんなさい」
インド人達はのたまったが、なぁーにが「ごめんなさい」だ。ごめんですむなら警察はいらないよ!
腹の虫なんかおさまるわけがないのである。
誤解しないで欲しいのだが、私が怒り狂ったのは友達と一緒に旅行に行かれなくなったからではない。ILPの申請ひとりで出来ないじゃない! とか、ジープは誰とシェアすればいいんだ、バスで行けってことか? とかでもまったくない。
ダメかもしれない可能性があったのなら、はっきりと「6月なら大丈夫」などと最初から太鼓判押すな! ということ。
あげく「行くって約束してない」とはなにごとぞ!
たとえはっきりとした日付の約束をしていなかったとしても「6月なのに大丈夫じゃなくなった」時点ですぐ教えろ! である。そして
「何を考えているんだ、繁忙期の6月に休暇とか!」
非難囂々浴びながら6月まるまる休みを取った私に「1日から30日まで全部旅に行かれなくなった理由を述べよ!」の4点なのである。
大喧嘩の直後
「もういい! ひとりで行く!」
デリーからレーへの航空運賃を調べたところ、なんと往復で33645ルピー(約6万円)に跳ね上がっていた。うまく格安航空券を手配したならば、余裕で日本からインドの往復ができる金額ではないか。
ギリギリまで引っ張られたことによる、この航空券の鬼ほどの値上がりも、私の怒りに油を注いだことは言うまでもない。