ぼうけんこぞう

旅と冒険(回遊ともいう)の軌跡と映画

インド映画ロケ地巡れない Devdas

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ヒンディー映画「Devdas」(2002)

配役:

‘Dev’ ことDevdas Mukherjee役:Shah Rukh Khan
タワイフChandramukhi役: Madhuri Dixit Nene
‘Paro’ ことParvati Chakraborty役:Aishwarya Rai
Paroの母親役:Kirron Kher
Kalibabu役:Milind Gunaji
“Chunnibabu”ことChunnilal 役:Jackie Shroff
Paroの義母役:Dina Pathak

ネタバレしない程度のあらすじ:

オックスフォードに留学していたDev(シャー・ルク・カーン)が、10年ぶりにロンドンから帰国。向かいの家に住む幼なじみのParo(アイシュワリヤー・ライ)と結婚しようとするも、母親同士が「家の格が違うとの理由で言争いをしたために許されないことに。
「駆け落ちしない?」とParoから持ちかけられるも踏ん切れず、「君は友達だ」という手紙をParoに残して家を出てしまう。悲嘆にくれた
Paroは子持ちの荘園主のもとに後妻として嫁がされてしまう。Paroの結婚式当日、Devは手紙は間違いで両親を説得するからといいに来るのだが、Paroは結婚式当日にはどうにもできず、表面上はきっぱりと断る。
以降、失意のDevは生きる希望を失い、
タワイフ(日本でいう花魁)のChandramukhi(マドゥーリ・ディキシット)のいる娼館にて、酒びたりの日々であけても暮れても頭の中はParo。ChandramukhiはそんなDevに恋をしてしまう。
Devはといえば自堕落な日々のつけで不治の病を患い、死の直前にParoに会いに行く……。
詳しいあらすじと解説は
Namaste Bollywoodの「Devdas(2002)#070」を参照。

小僧的視点:

この映画はSarat Chandra Chattopadhyay(サラット・チャンドラ・チャトパディ)が1901年に執筆、1917年に発表したベンガル語「Devdas」という作品がたたき台になっている。
実はベンガルときいてこの映画を観るのをそうとう先延ばしにきてきた。ベンガル映画は何本か観たけれど、私の好きな恋と笑いと踊りとハッピーエンドの対極にあるベンガルものは相いれないことがわかっていたからだ。ベンガルといえばいわゆるコルカタのある西ベンガル州のことで、Sarat Chandra Chattopadhyayも西ベンガル生まれだが育ちは母方の実家があるビハール州のBhagalpurだ。
耽美的なくせにシリアスで暗くてハッピーエンドじゃないんだろうなと思っていたのだけれど、果たして小説はそのものであった(←その通りなんかい!)
ただ、この映画はいわゆるベンガル映画のていではまったくなく、豪華でとてつもなく印象的なシーンに溢れ、目を見張らんばかりの圧巻のダンスも繰り広げられる。尻込みしていないで、もっと早く観ればよかったと思った。

この映画のキーワードでもある灯明を手に踊るParoはため息が出るほど美しい。

Chandramukhiのきらびやかな衣装と安定感のある踊り。三十路半ばとは思えない重厚感は見ていて飽きない。

原作ではParoとChandramukhiは顔を合わせることはなかったが、この映画の中ではParoが娼館に出向いたり、Chandramukhiをドゥルガ祭のために自宅へ招待したりといったやりとりが創られており、物語に深みが増している。
この時のParoとChandramukhi踊りがまぁ、素晴らしい。
Paroの方が軽量のためなのかステップ、ジャンプともに躍動感はあるが素人っぽさが感じられ、Chandramukhiにはどっしりとした重厚感のある玄人な踊り。2人の踊るさまからも二人の置かれている境遇やキャラクターが読み取れ、いとをかしだ。

脱線・Pathakさん

このクリップの中に二人の踊りっぷりを見て、ニコニコする白いサリーを着た義母が出てくる。この人を見た時に
「あれ? Ratna Pathak(ラトナ・パサック)随分老けてる。15年も前の映画なのにどうなってるんだ?」
とびっくりした。
Ratna PathakはKhoobsurat (2014)、2016 Kapoor & Sons  (2014) Mubarakan  (2014)など、インド映画を観ていれば「キツイお母さん役」として出くわしているはずの役者さんなのだが、義母役のこの人はDina Pathak(ダイナ・パサック)という名前。なんとRatna Pathakのお母さんであった。どうりで間違えるはずだ。


この映画の中でいいシーンだなと思ったのが、この義母とParoのからみにある。前半の部分に月明かりの中で眠るParoが寝返りを打とうとして、あわや灯明に触れてしまいそうになる手を寸前でDevが受け止め、自らの手を火に焼くといったシーンがある。

幻想的でとても印象的なシーンなのだが、後半灯明と手がらみでもう一度出てきてうならされた。素敵な演出だと思う。

Chandramukhiの衣装はどれも素晴らしく、日本円で300万円程度。なかでも初めてDevが置屋に来た時のカタックダンスの衣装Ghagra (ヒンディー語は घाघरा なのでghāghrāと書かれることもある)は30Kgの重さがあり、本人が踊りを停めてもスカートだけはずっとゆらゆらしていたらしい。
その衣装がこれ

確かに重そうだ。考えてみれば鎧を着て踊っているのと変わらないかもしれない。

Devdas: Bollywood’s gambleによると、製作に2年半かかり完璧主義者のBhansali監督のもと役者も大変だったようだが、その間2人のスタッフが事故で亡くなって1人は怪我を負い、プロデューサーのBharat Shahが16か月拘置されるというとんでもない難産の末に出来上がったとのこと。
大変なのは衣装のみならず、Devの実家、Paroの実家、嫁ぎ先の荘園、Chandramukhiのいる娼館、ドルガ神の祭が行われる寺院からガンジス川に至るまで全部がセットでロケはない。ロケ地巡りをなによりも楽しみにしている私は大ガックリ大会。
(←大変なのそこかよ!)
ところがあちこちに、西ベンガルでもビハールでもないラジャスタンのBikanerで撮影されたと書いてあるのだ。Filmapsには地図も載っていたのだが、拡大していっても銀行のATMにしかたどり着かず、どう考えてもそこがロケ地だとは思いにくい。

We never shot on any real-life locations; everything was shot on the huge sets recreated at Mumbai’s Filmcity. The train buggies we shot were recreated from that era; we went to Bikaner, Rajasthan (in the northwestern state of India), to shoot in the train that was used in that period.

‘Madhuri gets more beautiful’

 

実生活でのロケはなかったとカメラマンが証言しているのだけれど、どうやらビカネールまで行って当時使われていた電車の車両でラスト部分の車内の撮影をしていたようだ。ま、要はその列車が偶然ビカネールのあたりを走っていたのでビカネールで撮影が行われがわけで、その車両が走っている区間が他にあればカンプールでもアグラでも別に構わなかったわけである。

ロケ地
Inside the Train (Bikaner)

無理くり地図を作ろうとすれば、こんな感じか。

これで積年の疑問が解決、すっきりした。


超脱線・Milind Gunaji

先のDola Re Dolaというダンスクリップの中に、義母とは別にサブリミナル的に登場してくるKalibabu(ミリンド・グナージ)という男性がいた。

インドでは尊敬を表すために目下のモノが相手の足にタッチ、タッチされた人は相手の頭を触って祝福をするという習慣があるのだけれど、Paroがはじめてお輿入れをして来た日、KalibabuはこのしぐさにかこつけてParono足の甲をスケベったらしく撫でまわしちゃったりして無礼極まりなかったのである。
Dola Re Dolaの踊りの後、
ChandramukhiがParoの友人なんかではなく、タワイフなんだぜとか自分も娼館に出入りしているくせにバラしちゃうし、女性に手をあげたり、Devのことを旦那や義母にチクったりする非常にいけすかない奴なんである。
以下のクリップがその様子。

……が私はこのKalibabu役の俳優に、なぜだかとても惹かれたのであった。(←えーっ)

1968年生まれと書かれているサイトもあるが、Wikipediaには1961年生まれとあった。
よく死亡説がガセネタで流れるので有名な俳優らしいが、2017年もテルグ映画に出演しているようなのでとりあえずは生きているようだ。

 

 

なかなかいい感じでオジサンっぷりが進んでいるのだが、1961年生まれだとする動画を見つけた。

「あららら、こうなっちゃったか」なオジサンっぷり進化しすぎではあるものの、この人、実は旅行作家だったということが判明した。俳優でもあり、ホテルマネージメントに首も突っ込み、ツアー会社も運営していれば、観光自然大使みたいなことも請け負っていたりする。
あー、そうか。旅行作家と映画とサービス業という自分と同じニオイに惹かれたのかも。

この映画が観られるサイト:

https://einthusan.tv/movie/watch/0480/?lang=hindi