ぼうけんこぞう

旅と冒険(回遊ともいう)の軌跡と映画

GIVE & GIVENという考え方

https://www.instagram.com/p/BaxH0sxnRP_/

Lal Qila

僕の旅は決して豪華とはいえない。両替が出来なくて一文無しになったこともあれば、物価が高くて毎日パンばかりかじらなければならないときもあった。

そんなとき、屋台の主人が「お金はいいから、これ食いな」とご馳走してくれたり、「パンばかりじゃ身体に悪いよ」と単に電車で前の座席に乗り合わせていただけのおばちゃんが、大切な食料を分けてくれる。

旅をしていれば、世界の人がいかに僕達旅人に優しいかということを感じるのは、一度や二度ではないはずだ。はじめはその優しさを受け入れることに僕は少々抵抗があった。貧しい国であったりすればなおさらだし、なぜ知りもしない通りすがりの旅人に、ここまで優しくなれるのだろうかと戸惑いを感じることさえもあった。

チベットを旅した時、巡礼者にあたりまえの顔で施しをする町の人々を目にした。これは施しをする彼らもいつしか巡礼に出て、他の町の人から施しを受けるからなのだろう。
与える彼らと与えられる巡礼者を見ているうちに、僕はふと気付いたのである。
そうか、自分も誰かに与えればいいのだと。
巡礼者達は僕などとはくらべものにならないほどの、長い長い旅をしている。
旅のあいだは、いつも誰かに与えられながら生きていく。しかし、旅が終われば、今度は巡礼者に与える側に立つのである。もちろん、施しをしてくれた当人に、貰ったバター茶を返すことは出来ない。でも、それをまた他の誰かに注いでまわるということで、好意や善意は人を通じて世界を、いや、地球をぐるぐる回る。

「GIVE & TAKE」とはよく聞くフレーズだけれど、実は「GIVE & GIVEN」だったのではないだろうかと思い始めたのだ。「与えて取る、与えられるから取る」という発想ではなく、「与えて、与えられる」……。

屋台のおじさんも、電車のおばさんも、きっと若い頃に与えられたモノを僕に返してくれたのだろう。だったら、僕もまた他の誰かに返せばよいのだ。
そう気づいてから、僕はあえて旅先での好意には気持ちよく甘え、旅を終えた日常で旅人に出会えば、彼らに何かを返すことにしている。