ぼうけんこぞう

旅と冒険(回遊ともいう)の軌跡と映画

Shadow of China

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日本映画「Shadow of China」(1989)

配役:

Henry Wong役:John Lone
Akira Kitayama役:佐藤浩市
Katharine役:Sammi Davis
Moo-Ling役:Vivian Wu

ネタバレしない程度のあらすじ:

舞台は1976年秋の国際都市香港。
毛沢東の死をきっかけに起きた中国の内部抗争から逃れ、恋人モンリンとの愛も捨て、香港に密入国をはかって自由を手に入れた紅衛兵の呉昌。

“大林一夫”という日本人を探す日本人ジャーナリスト・北山アキラは、香港の上海クラブで歌手のモンリンを紹介され、次第にに惹かれていく。この2人はプライベート・パーティに現れたヘンリーと名乗る若き実業家と出会うが、ヘンリーこそ13年前にモンリンと別れた呉昌であり、上海の紅衛兵の中にいたと噂される日本人「大林一夫」であった。

香港の暗黒界にも太いパイプを持つ、李克中が所有する新聞社“華民日報”の買収にも成功したヘンリーは、1度は断ち切ったはずのモンリンと長い時間を超えて結ばれる。
ヘンリーが大林一夫であることを知った李克中の魔の手から、モンリンだけはなんとか逃そうとするも……。

小僧的視点:

とかなんとか、ここのところ映画のことばっかり書いていて、旅行作家と自称しているくせに、映画評論家にでもなるつもりか? と、全世界の片手の指で数えきれる冒険小僧ファンは、そろそろうんざりしているかもしれない。

ご安心ください。まだ続けます(←やめないのか!)
映画をそんな数多く観ているわけでもなければ、歴史や文化に造詣が深いわけでもなんでもないのに、おざなりな感じのあらすじ(←やっぱりそうか!)を書いてみたり、超主観的な感想を述べているのには理由がある。

時として、映画や画像は私に病を発症させる。どんな病かと言えば「どーしても、○○行きたい病」である。

このShadow of Chinaという映画で、私はこの難病を生まれて初めて発症した。
多分、この映画を観たほとんどの人の記憶にはないと思うのだが、清水靖晃さんのサキソフォンに乗せて、スクリーンを流れていった香港の夜景に私はからめとられた。
ジョン・ローン全盛期の頃の映画なのだけれど、ヘンリー・ウォンも佐藤浩市もへったくれもなかった。映画を観て帰ってきた私の頭に残っていたのは、眼下にひざまずいていた香港の夜景のみ。
「いつか、香港の夜景にひざまずいて貰いたい」

なぁに言ってんだか……自分ながらバカとしか思えないが、「どーしても、香港行きたい病」を発症してしまったのだ。
この映画は1989年に東京映画祭に出品され、日本で一般公開されたのは1990年5月である。
何月に劇場で観たのかはっきり思い出せないが、当時、証券会社で営業として働いていた私は、8月には香港の会社の面接試験を受け、翌1991年には香港に住んでいた。

帰港するたびに飛行機の窓の外にひざまずく香港の夜景に満足しても、以降日本へがっつり戻ることもなく、20年近く香港近辺で回遊。ここまで来ると人生も狂いかねないので、とても危険な病でもあろう。

この間、「どーしても、チベット行きたい病」を発症し、ブータンでウォーミングアップをしてからチベットへ行って本を書いてみたりもした。
5~6年に1度とそれほど頻繁に起きる発作ではなかったのが、ここのところのインド映画で発作の頻度が劇的にあがってきてしまっている。
その発症の記録というか発症の原因そのものを書き止めている、これはいわば「旅の記録」なのである。

私達は生きているようで、実は生かされている……というのは持論なのだけれど、アジアとなんの接点も持たなかった私をまずは香港に導いたのが、あの夜景でありこの映画だったのかもしれない。
香港で、台湾で、そしてアジアのことを書きちらしたからこそ繋がったたくさんの友人達。
すべては、この映画からはじまっているのだと思うと感慨深い。

踊るジョン・ローン。普段ボリウッドのダンスばかり見ているので、妙に地味に感じてしまうが中華の踊りはこんな感じが普通。

この映画が観られるサイト:無