ぼうけんこぞう

旅と冒険(回遊ともいう)の軌跡と映画

Newton

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ヒンディー映画「Newton」(2017)

配役:

Newton Kumar役:Rajkummar Rao
軍補佐官Aatma Singh役:Pankaj Tripathi
Malko Netam役:Anjali Patil
選挙管理指導員役(特別出演):Sanjay Mishra 

ネタバレしない程度のあらすじ:

公務員で選挙管理の任務をまかされたNewton(ラジクマール・ラオ) がインド中央部・チャッティースガル州のゲリラの潜むジャングルへ、防弾チョッキにヘルメットで向かう。護衛のためについてきたもののなるべく早く切り上げて安全に引き上げたい軍の補佐官と戦いつつ、なんとか自由で公平な投票を行うべくベストを尽くす。

小僧的視点:

時間に正確だ」ということだけで公務員が表彰されてしまうインドでは、さぞかし生きにくいだろうなぁと思われる四角四面のNewtonがすることはことごとくすべて正論であり、正直ではあるのだ。その方法はあれこれ納得がいかなかったり
「そこまで?」
思わないでもないのだけれど……まぁ、そこはコメディ映画、でもかなりブラック気味。
有権者が76人しかいないジャングルへ任務を背負った4人(うちMalkoは現地の人)が向かうのだが、ヒンディー語もほとんど通じない。 ヒンディー語はインドのたった18%の人々の母語なので仕方ないとしても、押ボタン式の投票機も初めて見るものである。
それ以前に
「投票するといくら貰えるの?」
こんなリアクションのジャングルの人たちに、投票の意味を
なんとか伝えようとするも、立候補者の名前などその日はじめて聞いたジャングルの人々には何がなんだかわからない。
面白かったのはAatma(パンカジ・トゥリパティ)が投票機をゲーム機だから適当に遊べばいいんだ的な嘘を教えようとし、ちゃんと意味を伝えようとするNewtonがジャングルの人たちを前に言争いをするシーン。
「私は村の長老でモノゴトをわきまえている。あなたたちの係争の調停を申し出る」
長老が立ち上がった場面では、インド的なるものと非インド的なるもののせめぎあいにジャングル独自のルールという三つ巴にで大爆笑してしまった。

インドは広い。言語も公的とされるものだけで22言語を数える。義務教育は存在しないので、選挙だ投票だと言われても
「それ美味しいの?」
な人々がいてもおかしくない。驚いたのはそれでもちゃんと、投票カードは届いているということだ。投票カードがあるということはそんなジャングルでもちゃんとIDがいきわたっているということになる。IDがあるといいうことは近年大変厳しくなったと噂の税の徴収も、行われるということになろう。

つい最近、好奇心が抑えきれずに2012年5段階評価の0という映画を観たばかり。この映画は対照的に4.5だの4だのを獲得し、大変話題にもなったし興行的にも成功したようである。
確かに都市部ではないインドの村人の実態とか、
「こんな役人いるわけないじゃん、みんな袖の下ばっかり要求するし、時間にはルーズだし、約束なんかちっと守らないよ!」
逆説的なインド公務員批判とか……深いことは深い。
恋と笑いと踊りとハッピーエンド好きな私は、その深さをインド映画に求めていないといえばそれまでかもしれない。
ただ、Newton役のラジクマール・ラオは「さえない、情けない」人物の役をやらせたら右に出る者はいない役者さんで好演、キャスティング的にはどんぴしゃだった。

この映画が観られるサイト:

https://einthusan.tv/movie/watch/6H0t/?lang=hindi