ぼうけんこぞう

旅と冒険(回遊ともいう)の軌跡と映画

メワールとマルワール

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マルワリ商人のハヴェリ(邸宅)


最近、「Veer」という映画のことを書いたのだけれど、その中にマルワール地方というのが出てきた。いったいどこなんだよ? マルワールとメワールってカタカナ表記の違いだけで実は同じもの?
私のようなインドと歴史素人はこういった疑問を抱いてしまうので、メワールとマルワール、そしてラジプートについてまとめておく。

メワール(Mewar)とマルワール(Marwar

なんとなく響きも綴りも似ていて混同しがちなのだけれど、メワール(Mewar)とマルワール(Marwar)は実はまったく違うものだ。

メワール(Mewar)はラジャスタン中南部の地域でBhilwara、Rajsamand、Chittorgarh、Udaipur、Tehsil Pirawa of Jhalawar District、Neemuch and Mandsaur districts of Madhya Pradesh、Gujaratのいくつかの地域。
メワールは「メダパタ」という地域の名前からきていて、メダパタはメダ族というその地域に住む部族の名前から。

マルワールはBarmer、Jalore、Nagaur、Jodhpur、Pali、Sikarの一部地域。
マルワールはサンスクリット語の「マル(砂漠)」とラジャスタン語の「ワド(地域)」からきていて砂漠地域とでもなろうか。
……とか書いてもなかなかイメージしにくいので、地図にマッピングしてみた。

赤がメルワール、紫がマルワールだ。

どちらの地域もラジプート族の地なのだけれど、1950年にラジャスタン州となるまでの過程も言語も違う。 


メワール王国は734年Bappa Rawalが建国。戦、敗戦、王位継承、設立といった歴史。
Sonar, Lohars, Bhilsといった職人さんはMewarの人たちで、Mewari(メワール人)の性質的には大胆さがあげられる。言語はデーヴァナーガリー語からの影響を受けたメワール語。
有名なお祭りは夫婦の絆を強め、未婚の女性はすてきな夫とめぐりあえるようにと行うGangaurで季節は春。

 

マルワールは6世紀にGurjara Pratiharaがジョドプールから9km離れたマンドールを都として建国。王位継承というよりもムガール帝国とラジプートがとっかえひっかえ治めたという歴史のある地域。
また、Birlas(ビルラー)をはじめとしたKhandelwal、 Agrawal、Maheshwari, ジャイナ教徒、Gahoi of Marwar、Bajajs, Goenkas Singhaniasなどのビジネスマングループがこの人たちだ。Marwari(マルワリ人)は性質的には当たりが柔らかく、どちらかというと菜食を好む。サンスクリット語とマハジャニ語からの影響を受けた言語を用いている。有名なお祭りはモンスーンの到来を祝うTeej。

 

ラジプート

吟遊詩人、弾唱詩人による伝承なので事実をたどることはできないが、ラジプートの家系は太陽、月、火という3つの別々の起源をもっているとされる。
マハーバーラタ」に述べられている伝承上の太陽や月の家系、そしてグジャラート州にあるアーブー山で賢者ヴァシシュタが守ってきたという「犠牲の火」に先祖をたどる家系だ。 

太陽系はウダイプールとチットールガルのシソーディア(Sisodias)家、ジョドプールとビカネールのラトール(Rathores)家、アンベールとジャイプールのカチワーハー家(Kachawas)。
月系はジャイサルメールのバティ(Bhattis)家
「犠牲の火」の系列はプラティーハーラ家、パラマーラ家、チャウハーン家などである。

 

理解が深まってから「Veer」を観るならこちらから。


 

参考記事:


 

 

Veer

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ヒンディー映画「Veer」(2010)

配役:

Veerの父親Prithvi Singh役:Mithun Chakraborty
Madhavghar王、Yashodharaの父親Gyanendra Singh役:Jackie Shroff
Veer Pratap Singh役:Salman Khan
Veerの弟Punya Pratap Singh役:Sohail Khan
Yashodhara王女役:Zareen Khan
Yashodharaの兄Gajendra Singh役:Puru Raajkumar
Lady Angela Fraser(James Fraser知事の妻)役:Lisa Lazarus
ラジャスタン知事James Fraser役:Tim James Lawrence

 

 

 

すっかり人任せなあらすじ:

 ピンダーリという武装集団に属する架空の英雄Veerの物語。

これでインディア 2010年1月

 

小僧的視点:

興行的に大コケだったのには、19世紀当時には着ていないはずの衣装、話していないはずの言葉など時代考証がずさんだった以外にも、予告編の作りがよくなかったこともあると思う。
「部族間の復讐よりも祖国のことの方が大事じゃないのか? という地球人的俯瞰的発想が素敵だなぁ」
観終わった後に予告編を検索したのだが、これを観たら
「別に観たくないな」
思ったに違いないシロモノだった。

 全然観たくならない予告編。

 

色恋もあるし、踊るし、最後に救いもあるし(ただ、孫がやけにオッサンくさいのは否めない)、楽しめる映画なのにもったいないと思う。

踊りがイマイチなのであまりSalman Khanを評価していなかったのだけれど、なぜかこの映画ではじめて「あれ? もしかしてカッコイイ?」と勘違いできた次第である。 

 

Pindaris
VeerはThe Pindaris(ピンダーリ पिण्डारी / पिंडारी)だという設定だった。
Pindariとはムガール帝国崩壊後の18世紀にパターン族やジャート族などによって形成された武装騎馬集団 で、当時デカン高原から北インドまでを支配下に置いていたマラーター同盟と組んでみたり離れてみたりしながら、インド亜大陸を植民地化しようとする英国と戦った。Pindariのリーダー達は主にモスリムだがさまざまな階級から集められたため、宗教はさまざま。特に給料というのはなく、敵からの強奪によって日々の生計を立てていたようだ。
ピンダーリが主に活躍をしたのはマルワール地方(現在のマディヤ・プラデーシュ州南西部)で、英国と手を結んだラージプート族がMadhavgharの王Gyanendra Singh(ジャッキー・シュロフ)という設定だった。

マルワール地方ってなんぞ? という場合は以下をどうぞ。

 
 
 

 

ロケ地

撮影はマハーラーシュトラ州、ラジャスタン州、マディヤ・プラデーシュ州と英国にて。

 

ロケ地
Munbai (Maharashtra)

大学の場面は当初PuneにあるEngineering and the Agricultural Collegeで撮影される予定だったのが豚インフルエンザのためにムンバイに変更された。  


 

ロケ地
Madhavgarh (Madhya Pradesh)

冒頭の駅はここ

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ロケ地
Amber Fort  (Jaipur, Rajasthan)

婿選びの儀式「スワヤンヴァル」が行われたのも、VeerとGyanendra Singhの戦闘シーンもここ。
撮影時に屋根を壊したり、作ってはいけないところに壁築いたりと相当やらかし、ラジャスタンの最高裁から撮影停止を求められた。(罰金払ってから撮影再開)

 

 

 

ロケ地
Chandra Mahal Palace (City palace complex Jaipur, Rajasthan)

Gyanendra Singhに招待されてVeerとPunyaが赴いた宮殿で、PunyaがAngelaの気をひこうとしたシーン。

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シティパレスの中にあるこの宮殿は「Moon Palace月の宮殿)」 として知られている。

 

 

ロケ地
 Bikaner ( Bikaner, Rajasthan)

 砂漠のシーン

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ロケ地(ロンドン編)
Somerset House (London, England)
The Historic Dockyard Chatham
Wansford Station
Drapers' Hall
Rochester Castle and Cathedral

 これらの歌の中に出て来る全部ひっくるめてしまったのは、イギリスがいつも雨でいつも寒いからあまり好きじゃないとか、イギリス人の二枚舌外交と卑怯っぷりが相容れないとか、そういうことでは決してない。 

 

Veer2
一作目が大コケしたのに、Veer2が2020に公開予定らしい。

youtu.be

 

 

この映画が観られるサイト: 

https://einthusan.tv/movie/watch/1035/?lang=hindi

Guide

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ヒンディー映画「Guide」(1965)

配役:

Raju役:Dev Anand 
Rosie Marco/Miss Nalini役:Waheeda Rehman
Rajuの母親役:Leela Chitnis
Marco役:Kishore Sahu
Bhola役:Gajanan Jagirdar
Gaffoor役:Anwar Hussain
Joseph役:Rashid Khan
Pandit役:Ram Avtar 
村人役:Nazir Kashmiri  
Bholaの妻役:Praveen Paul 

 

ネタバレしない程度のあらすじ:

フリーランスの観光ガイドRaju (デヴ・アーナンド) はある日、年老いた考古学者Marco (キショール・サフー) とタワイフの母を持つ若妻Rosie (ワヒーダ・レーマン)のカップルを迎える。
Marcoは街はずれにある洞窟の調査のために、Rajuをガイドとして雇ったのだ。Marcoが調査に没頭している間、RajuはRosieを観光に連れ出しその踊りの上手さと純真さに感服する。母親がタワイフのため無理矢理高い身分のMarcoに嫁がされたこと、Marcoが許さないので踊りを諦めたことなど、Rosieの置かれた状況をRajuは知ることになる。
そんな身の上を嘆いたRosieは服毒自殺をはかるが、Marcoのメッセージを伝えるために偶然ホテルに戻ったRajuがそれを発見する。
Marcoから離れて好きな踊りをすることに決めたRosieをRajuはかくまったが、”踊り子”のステイタスが当時は低く売春婦とみなされたたため周囲の反対がひどく、ついには母親も怒って家を出ていってしまう。
Rajuの支援のかいあってRosieはダンサーとして名をあげ、二人は結婚。RajuはマネージャーとしてRosieを支えるも酒と博打に溺れはじめ、自分の成功は自分の力だけだと勘違いをしたRosieからも拒絶されるようになる。
Rosieの気持ちが離れていくことを恐れたRajuは、Marcoからの装飾品のプレゼントに関する書類にニセのサインをして宝飾品を売り払ってしまったため、サイン偽造の罪で逮捕されて2年の刑に。
模範囚として刑期が半年縮まったRajuは出所後、家に戻ることなくそのまま放浪の旅に出た。旅先でRajuを待っていたのは数奇な運命だった。

 

小僧的視点:

Chittorgarthが映画でどんな風に映るのかを確かめたくて、この映画を観よう観ようとしていたのだけれど、なにせ半世紀も前の映画。れっきとしたカラーなのだけれどイメージがなんとなくセピアっぽいし、ストーリーにもなんとなく気乗りしないまま見始めては途中でやめるというのを繰り返していた。

そのうちにChittorgarthを舞台にした「Padmaavat(2017)」が公開されたので、わくわくして観たのだが、映画に反対する団体とのいざこざがあってロケが出来ず……ほぼ全てがセットでの撮影となっていてしょぼーん。


やはり、この「Guide」を観るはこびとなった。
ムンバイのセットでの撮影だと思われる洞窟など今見るとかなりちゃちいが、Chittorgarthは正真正銘のホンモノで大変美しい(←砦と城好き)

 

  

Chittorgarth

「鋤をとるときも剣を手放さない」
と言われる勇敢で誇り高き騎士階級のラジプート。なかでもメワールは男性、女性ともに生きて敵の屈辱(敵の捕虜となった女性はペルシャの奴隷市場に売りに出されるなどした)を受けるよりも壮絶な死を選ぶことで知られていて、Chittorgarthは三度、Johaur(集団自決)の舞台になっている。

1度目は1303年、デリー・スルタナット朝(1206年から1526年までの約320年間デリーを中心に主として北インドを支配した5つのイスラーム王朝をこう呼ぶ)のムハンマド・ハルジーの手に落ちることを避けるために、メワールの王妃パドミニとラジプートの女性たちが炎のなかに飛び込んだ。

2度目は1535年、グジャラートのスルタン・バハドゥール・シャーの攻撃を受けた時で13000人のラジプート女性がラニ・カルナワティの先導のもと炎に身を投じ、32000人の男性がサフラン色の死に装束をまとって敵に突撃して玉砕した。
最後の総攻撃の前夜、女たちは化粧をし、きらびやかな衣装を身に付け、婚礼の夜と同じように聖なる火の回りを7回まわって宴を催し、それから城内の巨大な穴に焚かれた火の中に次々と飛び込んだ。翌朝、もはや後顧の憂いのない兵士たちは神聖とされるサフラン色の衣装に身につけ、全ての城門を開き、総攻撃を敢行した。

3度目は1568年、北インドムガール帝国のアクバル帝の攻撃の際で、8000人のラジプート女性が炎に焼かれた。
総攻撃の前夜、戦士たちの後顧の憂いを絶つべく、城内では旅路のための薪が焚かれ、Johaurが決行された。9人の妃、5人の王子、残された重臣の家族全て、そして高さ150メートル周囲5キロに及ぶ広大な大地に建つ要塞に住んでいたラジプートの家族たちが、聖なる火の中に次々と飛び込んでいった。
 城砦内には15世紀半ば、マハラナー・クンバがイスラム軍を打ち破った時記念に建てられたビジャイ・スタンプ(勝利の塔)があったが、翌日この記念塔と寺院の間には、骨灰が分厚い層になって堆積していたという。
山の上にあった集落は山麓に遷された。Chittorgarthに残ったイスラム軍は数年で引き上げ、城砦はその後廃墟と化した。
アクバル帝はラジプートの武勇をたたえ、その武将ジャイマとパッターの像を都であったアグラの城に建てたという。

ラジプート諸国がムガール帝国の宗主権を認め、娘をアクバル帝のもとに送って婚姻関係を結ぶ中、メワール王家はChittorgarthが陥落したあとも、ゲリラ戦で抵抗をつづけた。
1573年にジャイプール・アンベール王国のマン・シンがウダイプールのマハラナ・プラタップ・シンに、ムガール帝国に帰順するように諭すも受け入れず。ウダイプールは4代、なんと92年間にわたってムガール帝国に抵抗を続け、アクバル帝の死後(1614年2月18日)についに講和を結び、ムガール帝国の宗主権を認めた。

この時のムガール帝国・ジャハンギール帝はウダイプールの勇ましい抵抗の精神に敬意を表し、「Chittorgarthを再建、修復しない」ことを条件にムガール宮廷への王の出仕を免除(代わりに王子でOK)、王女達がムガール後宮へ入るのも免除、ウダイプールの領土をそのまま守ることにした。 

 「Padmaavat(2017)」はこの1度目の1303年のお話だ。
こういった背景があるからなのだろうか、Chittorgarthでサリーたなびかせてデートシーンを撮る映画が少ないのかもしれない。そういった意味では、大変貴重な映画ではある。

ロケ地

撮影はラジャスタン州とムンバイのスタジオにて。

 

ロケ地
 Vijay Stamb (Chittorgarth, Rajasthan)

 
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Padmaavatに映りこむVijay Stamb

ヴィジェイ・スタンブ(勝利の塔)は、15世紀メワール国王ラナ・クンバがマールワー・スルターン朝のマフムード・シャー1世ことムハンマッド・ハルジー(在位:1436-69)のイスラム軍との戦いに勝利(1440年)した戦勝記念として建立。
9階建て高さ37m、建物内外にヒンドゥー教彫刻を施したものとしてはインドで最も高い建築物だが、1303年の話であるはずの映画「Padmaavat」のこのシーンに存在しないはずの塔が奥ににゅっとそびえてしまっている。
いいのか? これで? と思いながら観た覚えがある
まぁ、もともと小説の映画化だとして公開されたのだから、つくりごと。
いいんだなきっと。
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ロケ地
 Chittorgarth Fort (Chittorgarth, Rajasthan)

 そびえる勝利の塔が右側に見える。f:id:bokenkozo:20180702201511j:plain

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ロケ地
Rani Padminis Palace (Chittorgarth, Rajasthan)

 デリー・スルタナット朝(1206年 - 1526年までの約320年間デリーを中心に主として北インドを支配した5つのイスラーム王朝の総称)のムハンマド・ハルジー(アラウディンとも)が評判の美女PadminiをわがものにしようとChittorgarthに攻め込んできた。
ところがあまりに屈強な城砦を前に攻略は失敗、そこでアラウディンはパドミニの夫であるメワール国王にこう切り出した。
「パドミニを一目拝ませてくれ、そうすれば諦めて立ち去ろう」
この申し出は聞き入れられ、パドミニはアラディンに姿を見せることとなる。この時パトミニがアラウディンに姿を見せた場所が、Rosieがブルーのサリーをひらひらさせているパドミニ宮殿と呼ばれる3階建ての白亜の宮殿前の貯水池だ。
伝説によるとアラウディンは貯水池の水面に映るパドミニの姿を見せられただけだったという。つまり、このRosie状態。
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 アラウディンはこんな感じでパドミニを見たのだと思われる。

 

ロケ地
Lake Fatehsagar (Udaipur, Rajasthan)

 RajuがRosieをなだめるシーン。f:id:bokenkozo:20180702215110j:plain

 

ロケ地
City Palace (Udaipur, Rajasthan)

 Rajuの仕事っぷりを紹介するシーンf:id:bokenkozo:20180702215302j:plain

 

ロケ地
Old Udaipur 旧市街 (Udaipur, Rajasthan)

 Rajuが観光客を連れて歩くシーンf:id:bokenkozo:20180702215436j:plain

 

 

 

 

 

この映画が観られるサイト: 

https://einthusan.tv/movie/watch/8333/?lang=hindi

Rudaali

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ヒンディー映画「Rudaali」(1993)

配役:

Shanichari役:Dimple Kapadia ←Akshay Kumarの義母
Ram Avtar the zamindaar(荘園主)役:Amjad Khan ←SholayのGabbar Singh役
Ram Avtarの息子Lakshman Singh役:Raj Babbar
泣き女Bhikni役:Rakhee Gulzar
Shanichariの息子Budhua役:Raghuveer Yadav
Budhuaの妻'Mungri役:Sushmita Mukherjee
Mita Vashisht
Manohar Singh
Minaaz

 

ネタバレギリギリなあらすじ:

砂漠の村Barnaの荘園主(アムジャド・ハーン)は死期が近いため、近隣の町から泣き女Bhikni (ラキー・ガルザー) を呼び寄せる。荘園主の死を待つ間、Bhikniは村に住む未亡人Shanichari (ディンプル・カパディア)の家に仮住まいをする。Shanichariは生まれたと同時に父をなくし、旅芸人の一座とともにいなくなってしまった母のPeewliはにも捨てられたのだった。

酒飲みで放浪癖のあるGanjuと結婚し息子BudhuaをもうけるShanichariは、ある日砂漠で荘園主の息子Lakshman Singh (ラジ・ババー)に見初められ、妻の侍従として迎え入れられLakshman Singhから「話をする時はちゃんと顔を見るように」と教えられる。
「息子と旦那を放棄して私のところに来い」というLakshman Singhからの再三口説かれるも拒み続ける。そうこうするうちに夫のGanjuはペストで亡くなってしまい、息子のBudhuaは父親ゆずりの放浪癖ですぐどこかへ消えてしまうのだった。
ある日、Budhuaが妊娠した若い売春婦Mungri (スシュミタ・ムケルジー)を連れて家に戻って来る。Shanichariに反抗的なMungriは子供を堕ろしてしまい、孫を待ち望むShanichariの希望は打ち砕かれたうえにBudhuaは家からいなくなってしまう。

悲しいことが重なっても決して涙を流すことのないShanichariは、Shanichariの話を聞いてはすぐに涙を流すBhikniと徐々に仲良くなっていく。 
荘園主の長く待たされた死がやってきたその晩のこと、Bhikniは近隣の村へ仕事に行っていた。Lakshman Singhが父親の死後は村を離れる予定だと聞かされたShanichariがお別れに参じていた時、Bhikniが突然ペストで亡くなったというニュースが届けられ、とある秘密が明らかになる。
これを機に涙は堰をきり、ShanichariはRudaali(泣き女)へと変容をとげる。

 

小僧的視点:

映画の題名「 Rudaali(ルダリ)」は下層カーストに属する職業としての「泣き女」のこと。インド西北部ラジャスタンの一部の地域では高いカーストの人たちは自分の感情を表立って表すことを良しとしないため、家族の男性が亡くなった際にこのRudaaliを雇い入れ、悲しみを家族の替わりに表現させる。
泣き女は台湾の葬式で見たことがあるが、インドではカーストや社会的ステータスにまつわる文化的背景があったのかと勉強になった。
ただ、泣き女の習慣は100年ほど前にあったもので、今のラジャスタンにはすでにないとも言われている。(サティーもダウリーも法律上はないことになっているが、実際にはあるので……なんとも言えない)  

インドでは腕輪や首からさげるロケットや額につける赤い印などは結婚している女性の象徴。夫が亡くなると泣き女が来てすべてとりのぞくという習慣がある。特に額の赤い印は「夫との命綱」と考えられているため、毎日夫が妻に施すのが普通なのだが、こんなとれない額の印なら生き返りますよ……というCMがあった。

 

 なぜ、すでにないはずの泣き女がCMに? という気がしないでもない。

 

言霊が本当に?

映画の中で「もう死ぬ、もう死ぬ」言いながらなかなかくたばらない? 荘園主は、「Sholay」で伝説のGabbar Singhを演じていたAmjad Khan。これが実際に遺作となっていて、言霊? 呪い? などと考えたりも……。

 

恰幅のよくなったGabbar Singhが冒頭に現れる。

 

 

ロケ地

撮影はラジャスタン州にて。

 

ロケ地
Bada Bagh / Bara Baag  (Jethwai, Rajasthan)

 夫の火葬のシーン。その後腕輪などの装飾品を投げ捨てている。Lakshman Singhが装飾品をまとわないShanichariを見て夫の死を悟るシーン。

 

  

ロケ地
Barna Village (40km from Jaisalmer, Rajasthan)

 トウジンビエ(唐人稗)が主な作物だというこの村の村民820人全員が、一度はこの映画を観ているらしい。

 

 

ロケ地
Jailsalmer Fort (Jaisalmer, Rajasthan)

 キルトの店を出していたのがここ。

 

ロケ地
Khuri Desert (Jaisalmer, Rajasthan)

 砂漠でLakshman Singh に見初められるシーンはここ。

 

ロケ地
Kuldhara Ruins (Jaisalmer, Rajasthan)

 

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ロケ地
Moolsagar Palace (Jaisalmer, Rajasthan)

 荘園主の家はここ

youtu.be

 

ロケ地
Ram Mandir (Jaisalmer, Rajasthan)

 

 

 

この映画が観られるサイト:

https://einthusan.tv/movie/watch/4QSz/?lang=hindi

 

Chalo Dilli

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ヒンディー映画「Chalo Dilli」(2011)

配役:

Mihika Banerjee役:Lara Dutta 
Manu Gupta役:Vinay Pathak 
Lt. Col. Vikram Rathore役:Akshay Kumar 
Inspector Surendra Mishra役:Pankaj Jha
列車の車掌K. C. Pant役:Brijendra Kala 
"Laila O Laila"という曲の中のLaila役:Yana Gupta(特別出演)
タクシードライバーBablu役:Narottam Bain
トラック運転手Dharampalji 役:Dadhi R Pandey

 

 

ネタバレしない程度のあらすじ:

ムンバイ在住の投資銀行で活躍するキャリアウーマンMihika Banerjee (ララ・ダッタ)は路上でスーツケースの中身をまき散らす男性や交通規制による交通渋滞によって、デリー行きの飛行機に乗り遅れてしまった。どうしても夫Vikram Rana (アクシャイ・クマール)と落ち合わなければいけないので、普段はファーストクラスにしか乗らないMihikaだったがしぶしぶ格安航空機に乗り換えたところ、あのスーツケースの中身をまき散らしていたManu Gupta (ヴィネイ・パタック)も同乗。
ところが、デリー空港が閉鎖されていたため、飛行機が到着したのはジャイプールだった。深夜だったが4000ルピーのプリペイドタクシーでデリーへ向かおうとすると、34時間もぶっ通しで仕事をしていたので眠くて仕方のないドライバーに当たってしまい、居眠り運転で蛇行しまくり。
路肩にタクシーを止めて言争っているところへ「かぉーん すぃ ばりー ばーと ほーがいー (大したことないよ)」が口癖のManuが乗り込んできて、
「何度もジャイプールからデリーへは車で運転したことがあるので、目をつぶっていても行ける」
と眠りこけるドライバーを後部座席に追いやって、自分が運転しはじめる。
しばらくすると車がアジメール方向(デリーとは逆)に向かっていることに気付き、ドライバーをたたき起こして「ここはどこだ?」と訊くも、起こされたばかりのドライバーはわかるはずもない。おまけに車がエンコ。
二人はトラックをヒッチハイクして近くの安食堂兼安宿まで行き、翌朝はらくだタクシー、トラクターを乗り継いでNuaまで行き、そこから電車でジュヌジュヌ経由でデリーを目指す道中、ハイソな暮らしをしているMihikaが今まで経験をしたことのないトラブルが待ち構える。
確かにトラブルだらけであるのだが、この旅を通してふれあう人々そしてManuを通して、Give and Takeの発想で生きてきたMihikaの何かが少しだけ変わっていく。
料理に髪の毛が入っていても、レストランでメニューの上をゴキブリが歩いていても、荷物をなくしてしまっても、お金をすられても「たいしたことないよ」というManuに
「あなたにとって、いったい何が大したことなの!」
とキレていたMihikaであったが、旅が終わってみてManuにとって「大したこと」がなんなのかがわかるのだった。 

小僧的視点:

久々に旅人向けのいい映画に出会えた。

 

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 ムンバイからジャイプールまでは格安航空機とはいえ飛行機なので、デリーまで行けずに降ろされただけ。それこそ「大したこと」ではない。
ジャイプールからデリーまで、トイレ休憩2回の6時間もあれば着く距離(←なんだこの職業病的な距離感は)を逆方向のアジメールへ行ってみたり、Nuaやシェカワティ地方のJhunjhunuでギャングの抗争に巻き込まれて戒厳令が引かれたりする。
逆方向に行くなんてよくあることだし、飛行機のダイバートも何度も経験している。イスラエルではパレスチナ人による暴動、チベットではパンチェンラマ騒ぎにも巻き込まれ、昨年もモスリムとヒンドゥーの対立で戒厳令が敷かれたジャイプールに居た……つまり、旅をしていると普通に(なのか?)出くわす小さな事件から大きな事件まで、あとになって思うと強烈な旅の思い出にはなっているものの「大したこと」では本当にないのだ。むしろ、それをどう乗り越えるか、どう楽しむか……旅人の腕のみせどころでもある。

暴動や戒厳令の真っただ中にいても、あまり恐怖を感じたことがないというのが実際に経験した私の感想だ。映画だから特になのかもしれないが、抗争に巻き込まれているのに警察署からギャングが車に乗せてくれたりと……作り手の暖かさもあって、怖くはない。「ガタガタ道で頭ぶつけて痛かった」的印象の方が強く残る。

好きだった場面はトラックの運転手に、乗せてくれたお礼を払おうとすると
「妻がもうすぐ子供を産むんだ。無事に生まれるように祈ってくれればそれでいい」
と言われ、Mihikaが目を白黒させるところ。Nuaなどの田舎に行けばいくほど、旅人に優しい人たちは都市部よりも増えて来る。旅が思い通りに進まなければ進まないほど、こういった人たちとの出会いが増え、村の人々の親切や温情が染み入るのだ。
インドを、いや世界を自分の足で歩いた人なら、誰でも1度や2度はこんな経験をしたことがあるはずだ。そういった旅の醍醐味が再現され、Give and TakeだったMihikaがだんだんと「Given and Given」の発想に変わっていき、最後は誕生日パーティーにManuを招待しようという夫Vikramのアイディアに同意するなど「旅が教えてくれること」の偉大さも伝わってくる。

もし、あなたが旅好きならばラジャスタンの風景を楽しむだけのためでもいい、いちどは観ておいて損はない。

 

タイトルは反英スローガンから? 疑惑

映画のタイトル「Chalo Dilli」はもしかしたら、「Dilli Chalo」を文字っているのかもしれない。「Dilli Chalo」は「Jai Hind(インド万歳)」「Glory to India!(インドに栄光あれ)」などと並び、かつてインド国民軍(INA)を創立し日本軍と協力してインドを独立に導いたSubash Chandra Bose(スバーシュ・チャンドラ・ボース)の掲げた反英スローガンのうちのひとつ。
「Jai Hind」にいたっては今や軍人や警察官の間で普通に交わされる挨拶になっており、身近なところではエアー・インディアの機内放送でも使われている。

「Dilli Chalo」のもともとの意味は「デリーへ行こう」であるが、軍事的なスローガンなので「(英領インドの首都)デリーへ攻め込め!」という勢いのあるニュアンスなのだ。「何がなんでもデリーへ行かねば!」という雰囲気にピッタリだ。

 

 

ロケ地

撮影はマハーラーシュトラ州、ラジャスタン州、デリーなど。

 

ロケ地
Mumbai (Maharashtra, India)

ムンバイの渋滞でManuと出会うシーン

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飛行機に乗りそびれるところからManuとの再会シーン。

 

格安航空券の機内シーン

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ロケ地
On the way from Jaipur to Ajmer (Rajasthan)

眠くてしかたがないタクシードライバーともめていると、そこへManuが乗り込んでくる。

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アジメール方向へ行ってタクシーがエンコ、乗せてもらったトラックのシーン。最後の最後に私のお気に入りのシーン。


 

ロケ地
Nua (Rajasthan)

らくだタクシー、乗り合いトラクターでNuaの駅へ 。ラジャスタンらしい風景が楽しめる。

Nuaの駅舎の中はこんな感じ

 

ロケ地
Jhunjhunu (Rajasthan)

Nua駅から財布をスられてしまったために無賃乗車。それでも「大したことない」ので目の前のベンガル人とおしゃべりをしつつ、ラジャスタンの風景を楽しむシーン。 

 

キンマの汁でシミだらけの洗面台がある安宿のシーン。

 

 

ロケ地
Chandni Chowk (Old Delhi, Delhi,)

 Manuの家を訪ねて、「大したこと」を知るシーン。

 

この映画が観られるサイト:

Chalo Dilli (2011) Hindi in SD - Einthusan

 

The Shape of Water

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アメリカ映画「Shape of Water」(2017)

配役:

Elisa Esposito役:Sally Hawkins 
Richard Strickland役:Michael Shannon 
Giles役:Richard Jenkins
Z,elda Fuller役:Octavia Spencer
Robert Hoffstetler / スパイDimitri Mosenkov役: Michael Stuhlbarg 
"半魚人男性"役:Doug Jones 
Stricklandの妻Elaine Strickland役:Lauren Lee Smith
Zeldaの夫Brewster Fuller役:Martin Roach 
映画館のオーナーMr. Arzoumanian役:John Kapelos 
パイ屋の店員役:Morgan Kelly

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ネタバレしない程度のあらすじ:

1962年、アメリカとソ連の冷戦まっさかりの頃。首に傷を持つElisa Esposito(イライザ・エスポジト)は子供の時に川のそばに捨てられており、声が出ないので手話でコミュニケーションをする。映画館の上にあるアパートに一人暮らし、Baltimoreにある政府の秘密研究所で清掃の仕事をして生計を立てていた。一人で安アパートに暮らす中年女性。
友人は隣に住むイラストレーターでパイ屋の男に想いを寄せるGiles(ジャイルズ)という男性と、仕事仲間の黒人女性Zeldaだけ。

ある日、Elisaの勤務する研究所にプロジェクトリーダーのColonel Richard Stricklandによって、アマゾン川で捕獲されたという不思議な両生類が運び込まれてきた。この生き物に興味を示したElisaはその生き物が半魚人であることをつきとめ、ちょくちょく訪ねては好物のゆで卵を与えたり、レコードを聴かせたり、手話を教えたりして仲良くなってゆく。

しかし、研究が思うように進まず、Colonel Richard Stricklandが解剖実験を行うことを推し進めたため、これを知ったElisaはすぐにでも行動を移さないと半魚人が殺されてしまうと、Gilesと共謀して半魚人を助け出して家にかくまうことに。

 

小僧的視点:

最初「Shape of Water」ときいて、何のカタチなんだろうと思った。半魚人が水に浸かっているのでそのカタチなんだろうかとか。
見ているうちにわかってきたのは、実は「Shape of Love」で、それも水のように容器によってさまざまなカタチに変容可能なもののことだった。

半魚人に指を食いちぎられたRichard Stricklandはきちんとした仕事についてタイトルもある。ブロンドの美しい妻と子ども二人が新居で帰りを待ち、気に入った色の新車のキャデラックに乗ってなに不自由のないアメリカの理想的な家族であるのに対し、他の登場人物たちは真逆の位置にある。

半魚人に愛される声を持たない独身中年のElisa、仕事に復帰したいのに叶わないゲイのGiles、肌の色や職業とともに女性であることで正当に扱ってもらえないZelda、アマゾンから無理やり連れてこられて乱暴される半魚人。

世間一般から見るとマイナスとなりうる障害や差別や葛藤といったことが、相手が変わればそれこそが通じ合うための、補い合うための接点になる。
半魚人にとってはElisaが「口がきけない」ということは何の障壁にもなりえず、私たちがする身振り手振りのかわりにすっと手話をコミュニケーションツールにするのもそうだ。
この映画は変幻自在の水のようにイロイロな人生、イロイロな愛のカタチがあっていい。こうじゃなきゃいけないのだということはない……ということを教えてくれているような気がした。

好きだったのはアパートの部屋を水浸しというか水槽にしてしまうダークで幻想的なシーンと、家出をした? 半魚人が映画館のスクリーンの前に突っ立ってる場面。 

前に観たSFモノでガラス張りの棺桶みたいのに入ると、傷がなおってもと通りになるっていう設定があったのだけれど、この映画でも半魚人が触って念を込めると傷が治ったり毛が生えてきたりするという設定だった。
西洋医学、漢方、鍼灸、アーユルベーダと手を尽くしてもなかなか治らない病気の家族のために、今、カプセルか半魚人がとても欲しい……。
半魚人、どこにいったら会えるかなぁ?

 


 

ロケ地

撮影はカナダにて。

 

 

ロケ地
Toronto  (Ontario, Canada)

  

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ロケ地
Hamilton  (Ontario, Canada)

 

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この映画が観られるサイト:

https://amzn.to/2Kx6cvF

 

 

Kaabil

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ヒンディー映画「Kaabil」(2017)

配役:

Rohan Bhatnagar役:Hrithik Roshan 
”Su”ことSupriya Sharma役:Yami Gautam 
Madhavrao Shellar役:Ronit Roy ←兄
Amit Shellar役:Rohit Roy  ←弟
Inspector Amol Chaube役:Narendra Jha
Rohanの親友Zafar役:Suresh Menon 
Wasim役:Sahidur Rahman 
Wasimの父親役:Akhilendra Mishra
Sub-Inspector Pravin Nalavde役:Girish Kulkarni as 
Urvashi Rautela (歌の中の特別出演) 

 

ネタバレしない程度のあらすじ:

Rohan(リティク・ローシャン)は生まれた時から全盲ながら聴覚・嗅覚にすぐれ、器用にも声を替え1人で何役もこなすアニメのアフレコで生計を立てている。そんな彼が親友Zafar (スレッシュ・メノン)と普段からお世話になっている女性のアレンジで見合いをしたのは同じく全盲の”Su”ことSupriya(ヤーミー・ゴゥタム)だった。
会うなりSupriyaは「お世話になっているので断りきれずに見合いに来たけれど、結婚しなくても生きて行けるので、何か理由をつけてこの見合いを断って欲しい」と。
天涯孤独のSupriyaはNGO団体で働いて自立しており、週に2回ダンス教室でレッスンのためのピアノを弾いたりもしている。
「僕もお世話になっているから来たんだけど、今すぐ結婚したいわけじゃない。でも、せっかくだからお互いを知ってみてもいいんじゃない?」
実は一目ぼれ(目は見えないんだけどね)しているくせにRohanは答え、翌日はダンス教室に見学にいってSupriyaをダンスに誘い、とても目が見えないとは思えない踊りを披露。二人はデートを重ねて結婚するが、新婚生活に暗い影がしのびよる。
地域の大物政治家Madhavrao(ローニト・ローイ)の弟Amit (ロヒット・ローイ)は札付きの悪。手下のWasimを引きつれては飲み歩いていたが、Supriyaの美しさに目を付けて、Rohanが留守の時にWasimと共にSupriyaを襲う。
警察もみなMadhavraoのいいなりで弟の事件はもみ消され、つけあがったAmitは再度Supriyaを襲い……。

小僧的視点:

いつもはPCの小さな画面で映画を観ているのだけれど、この映画はジョドプールいち大きな映画館で封切りと同時に特等席で寝ころびながら、巨大スクリーンで観たのですごい迫力だった。
SRKの「Raees」が同日の公開だったので最後までどちらにするか迷ったあげく、これにした。

ところが、一緒に行った友達がとなりで
「次はね、こうなるよ」
とかなんとか、勝手に筋書きを予測するのだが、またそれが大当たりなのだ。封切りなので友人は何かをカンニングして言っているわけではないのだが、つまり、インド人にとっては「パターン通り」の展開ということなのだろう。
ひとつひとつ場面展開で驚いているぽっと出のインド映画好きの私は、まだまだ修行が足りないのである。

Sanjay Gupta(サンジェイ・グプタ)監督は外国映画を勝手にリメイクするので有名で、この映画もアメリカ版座頭市の「Blind Fury(1989)」と東野圭吾の小説を原作とする韓国映画「Broken<さまよう刃刃>(2014)」から発想を得たということになっている。
何を参考にしてなにから発想を得ても、インド人が創るかぎり結局出来上がりはパターン通りというのが笑える。

 

好きだったシーンは新居の建築現場で、お日様がここから出るんだと二人して窓からその景色を眺めるシーン。


昔、視覚障害のお客さんがツアーに参加していたことがあって、安全性もさることながら、どう「観光」という「観る」べきものを彼らに紹介すべきなのかとすごく悩んだことがある。
でも、結果からいうと心配は無用だった。光や香り、温度や音を頼りに健常者よりももっと旅を楽しみ、たくさんの思い出を作って帰っていってくれた。
そんなことを、このシーンを観ていたら思い出した。

街がきたないだの、ホスピタリティがどうこう、食事が日本と違う……さがして文句を言い続ける旅も、感じとれるすべてを好奇心とともに楽しんで帰っても同じ旅。
「足るを知る」のも大切なことなんじゃなかろうか。

 

バックダンサー

踊りの上手さでは定評のあるHrithik Roshanだけに、盲人の演技をしつつもダンスはキレッキレだ。

 

「Dhoom2」の時のタイトルソングも圧巻だった。
この踊りのバックダンサーの中に、緑と黒のシマシマの服を着て白いベルトをして、頑張ってはいるけどHrithik Roshanほどのキレはなく、足がちょいと短めな疑惑をもたげるダンサーがいる。誰だかわかるだろうか?

 

 そのダンサーはこの現場で声をかけられ、

この映画の主役に抜擢されたのである。

今回の映画のダンス教室のシーンにもたくさんのダンサーが登場するが、将来の映画スターがあそこから生まれないとも限らない?!
 

 

ロケ地

ほとんどの撮影はムンバイにて。当初撮影は88日間の予定だったのだが、11日も早く撮影開始から77日で終了。毎日きっかり9:30から撮影が行われたというから、朝が遅くて時間が守れないインドでは驚異的。なんでもSanjay Gupta監督が毎日カチカチっと時間通りに現場に現れて時間までにスタンバイしているので、役者もスタッフも時間を守るハメになり、スケジュール通り撮影がスムーズに運んだのらしい。
いいことだぁ~ (←仕事で行くインドでは、相当ひどい目に遭っているらしい)

 

ロケ地
Adlabs Imagica (Khopoli, Maharashtra)

「Kuch Din」の歌、デートシーンはここ。

 

ロケ地
Growel's 101 Mall (Mumbai, Maharashtra)

 二人がはぐれてしまうショッピングモールはここ。

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この映画が観られるサイト:

https://einthusan.tv/movie/watch/c102/?lang=hindi