ぼうけんこぞう

旅と冒険(回遊ともいう)の軌跡と映画

茶壷を飼おう!

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台湾流茶藝はおちょこのようなカップでお茶を飲む。背の高いカップはニオイを嗅ぐためだけのもの。

「茶壺を飼う(養茶壺)」という言葉をきいたことがあるだろうか?

中国語で『茶壷(ちゃー・ふー)』はお茶を入れる缶のことではなくて、急須のこと。『養(やん)』は犬や猫などの動物を飼う時にも使うし、子供を育てる時も『養大(やん・たー)』と書いて育てるという意味になる。

では、急須を飼うというのはどういうことなのだろうか。簡単に言ってしまえば、お茶を飲んだ後、絶対に急須を洗わないということになるのだけれど、これを『養(ケアする)』と彼らは言うのである。飲み終わったあとは茶葉を木製のおおぶりのピンセットのようなもので丹念につまみだし、布で拭いたり磨いたり……”飼い方”は人それぞれこだわりがあるようだ。
台灣での”飼う”為の急須は日本の陶器とは違い、素焼きの壷を思い出させるような土色や茶色が主流。大変高価なものだと紫色をしたものもある。

お茶の香りや成分が急須の表面からじわじわと溶け込んで、使えば使うほどほどお茶の味が良くなっていくというのだ。
疑いながらも、真新しい急須と同じ茶葉で飲み比べをしてみたところ、なるほど”飼われた”急須で煎れたお茶の味の方がまあるく、口当たりが良かった。

町角で夜遅く、人だかりがしていた。
集まっているのは急須のせり市を見に来た人達。ここでせりに登場するのはみんな飼われていた急須。水洗いしていないのでちょっと見にはガラクタかと見間違うほどに茶渋で薄汚れていて、蓋のところに干からびた茶葉が張り付いていたりすることもある。
私からすると小汚いとしか見えず、とうてい買う気にはなれなかったのだけれど
「花に水をやる時に話し掛けると長生きするように、急須にも愛情を注いで育てるといい急須になるんだよ」
隣に立ってせりをながめていたおじいさんが教えてくれた。単に洗わないだけではなく、どうも急須育ては奥が深そうだ。

小さい物ならかさばらないし、新品ならせり市と違って手頃な値段。
台灣旅行の際には是非一つ手に入れて、”飼って”みるのも悪くない。