横須賀②三笠と横須賀人

菊の紋章を鼻先につけた記念艦・三笠に日の丸がはためく

今回、延命地蔵尊にお詣りしたい以外に、軍艦を実際に見てその大きさを確かめたい！　というのがあった。
京急汐入駅から徒歩5分の汐入桟橋から「YOKOSUKA軍港巡り」という45分のクルージングが出ているので、是非乗ってみたいと思っていた。
ただ、今回は諸般の事情があって、いつ、なんどき病院へ呼び出されるかわからないという状況下での横須賀回遊。
船上で連絡を受けたものの45分間は下船できない……といった流れではマズイので仕方なくあきらめたものの、せめて横浜の氷川丸状態で軍艦が保存されている三笠公園に行ってみようと思い立った。

買物をしていた成城石井の店員さんに、会計ついでに
「ここから三笠公園までって歩いてどれくらいですか？」
と訊いてみた。すると
「えーと……」
レジのお姉さんは首を捻ったまま固まって
「ちょっと待ってくださいね」
と隣のレジの同僚に訊きに行った。そんなに遠いはずはないし、横須賀の人なら誰でも三笠公園がどこにあってどれくらいの距離かくらい知っているのだとばかり思ったのだけれど、あろうことか隣のレジの同僚もまた店長に訊きに行ったのである。
そういえば、横須賀中央駅にある100円ショップでそこから徒歩5分くらいの横須賀共済病院の方向を訊いたら
「わからないです」
って言われたっけ。
もしかして、横須賀の人は横須賀愛に溢れているくせに、道とか場所とかよく知らない？　疑惑である。

店長まで呼び出したあげく、成城石井の店員さんは「だいたい30分くらいです」と教えてくれた。
えー？　そんなにかかるのか！　と思ったのでその日に行くのは見送って、翌日出直すことにした。

三笠公園前の電話ボックスが灯台の形。横須賀では、各地で存続の危機がうたわれる電話ボックスが結構まだある。街の人達のガラケー使用比率も高いように感じた。

公園入口を入るとデーンと記念艦・三笠、デカっ！
右手に記念グッズ・模型・お菓子などを売っている売店とトイレ（なぜか添乗員さん用情報）、奥が船の鼻先なので行ってみると喫煙所に記念館三笠の説明の看板があった。

米海軍からの2400万円を含む内外の募金1億6000万円と国の予算9千8百万円で復元がなされたこの「三笠」は、イギリスの「ヴィクトリー」、アメリカの「コンスティチューション」と並び、独立を守るための重要な海の戦における歴史的な勝利をおさめたことから世界の三大記念艦のうちのひとつとなっている。

三笠を眺めながら風に吹かれていたら、こんな看板を発見した。港なので浅いように見えて、ぐっと深くなるのかもしれない。

入ってはいけない横須賀の海だが、透明度は意外に高くてキレイだった。

さて、くだんの成城石井からここ三笠公園までなのだが、実際は30分どころか15分もかからないくらいだった。
どうも横須賀の人はインドのウッタル・プラデーシュ人くらい、自分の街のことをよく知らないということがよくわかった。
ただ、「知らない」と言えばすむところを、なんとか答えを出そうと店長まで呼び出して努力してくれるあたり、成城石井の店員さん達はとても親切だったといえよう。

夕食を食べにいったお店の人や来ていたお客さんしかり、病院関係者しかり、おっとりしていて親切だけれどさらっとしている。閉鎖的なようでいてオープンマインドで、人懐っこいようでいて首都圏の田舎らしい距離の取り方をする横須賀の人たち。私にはとても心地よく感じられた。

私の横須賀人とのはじめての遭遇は、国内のツアーコンダクターをはじめた時だった。
たった１人の同期が横須賀出身で、京急と横須賀をこよなく愛し、おっとりしていて親切だけれどさらっとしている……そんな印象だった。
どうやら同期は典型的な横須賀人だったということが、今回の横須賀回遊で判明したような具合である。