ぼうけんこぞう

旅と冒険(回遊ともいう)の軌跡と映画

Kedarnath

ヒンディー映画「Kedarnath」(2018)

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配役:

Pithoo (シェルパ)の Mansoor役:Sushant Singh Rajput
"Mukku" ことMandakani Mishra役:Sara Ali Khan
Mukkuの父親Briraaj Mishra役:Nitish Bharadwaj
Mansoorの母親役:Alka Amin
Mukkuの母親Lata役: Sonali Sachdev
Mukkuの姉Brinda役:Pooja Gor
Kullu役:Nishant Dahiya
Bashir役:Mir Sarwar
Daddo役:Sunita Rajwar
住職(Chief Priest)役:Arun Bali
Hemchand役:Faiz Khan
Himalaya Tyagi役:Sharad Vyas
Tarang役:Priyadarshan
Helicopterの副操縦士役:Hitesh Bhardwaj 

 

ネタバレしない程度のあらすじ:


物語は2013年5月、ウッタルカーンド州ヒマラヤの山々に囲まれるKedarnathで幕が開く。ここにあるケダルナート寺院はヒンドゥー教の聖地で巡礼スポットだ。
谷から寺院へ巡礼客を籠やロバで連れて行くことを生業とするイスラム教徒Pithoo(ポーター/シェルパ)のMansoor(スシャント・シン・ラジプート)と巡礼客を受け入れるホステルを寺院から委託されて運営するヒンドゥー教のパンディット(お坊さん)の次女Mukku(サラ・アリ・カーン)の物語。

Mukkuは寺院の住職の甥と婚約していたが、この婚約者はもともとMukkuの姉と結婚するはずだったのが、姉より妹の方が可愛いくなったからということで乗り換えたいと言い出し、父親も承諾。
これをよしとしないMukkuは父への反抗の意味も含め、地元の男の子達に次々とちょっかいを出しては父親と婚約者を困らせるために家に来て自分にプロポーズするように仕向けていた。
ただ、Mansoorに対しては少し違った。Mukkuは隣村にある叔父の店に手伝いにいくためにMansoorを雇い、常客となる。 Mansoorの背負う籠の中から、Mansoorの引くロバの背から明るいじゃじゃ馬のMukkuは黙々と仕事をする奥手なMansoorに次から次へと話しかけ、やがて二人は恋に落ちるが異宗教の壁が立ちはだかり、二人の恋は婚約者によりコミュニティーからモスリムを排除するという機運につながっていく。

ちょうどこのころ北インド一帯に降り続いた雨のため、Kedarnathを流れるガンジス川の支流・Mandakini(マンダーキニ)川が増水、洪水の危険がしのびよっていた。Mansoorとの恋を知った父親により半ば強引にMukkuの結婚式が2013年6月15日に急遽執り行われ、その結婚式のさなかMukkuは手首を切って自殺をはかり、最初に発見した姉によって一命をとりとめるが……。
 

小僧的視点:

Mukku役のSara Ali KhanはSaif Ali Khan(サイフ・アリ・カーン)の前妻の娘で、これがデビュー作だ。
監督はSushant Singh Rajputの映画デビューとなった「Kai Po Che(2013)」でメガフォンをとったAbhishek Kapoor(アビシェーク・カプール)。「Kai Po Che(2013)」では2001年1月26日のグジャラート地震という歴史的な事実と、2002年2月27日の列車火災でヒンドゥー教の巡礼者58名の乗客が死亡したことに端を発したヒンドゥー教徒によるモスリム虐殺暴動(1000人~2,000人の命が失われたとされている)という異宗教との軋轢が背景になっていた。
今回も洪水という歴史的な事実とモスリム・ヒンドゥーの軋轢というペアであり、この監督はこういったテイストを友情や恋愛にからめるのが好きなんだろうなと思ったりする。

「Kai Po Che(2013)」でもSushantはグジャラートのひたむきでくぐもった感じの青年"Ish"ことIshaanを演じていたが、友人が誤って発した銃弾に倒れ絶命。主人公殺しの手口?も健在だ。
主人公の名前Mansoorはアラビア語勝利者の意味で”Mansur”と書くのが一般的だが、南アジアではMansoorと綴られることが多い。現地の人が名前を聞けばイッパツで「ああ、モスリムだな」とわかる仕組みになっているのだ。ただ、Sushantの顔はこれまたまったく「モスリムっぽく」なく、むしろSara Ali Khanの方がモスリム・パンジャビ顔のため、私にとってはどうしても違和感が残る。

ヘリコプターのシーンといい、最後のMukkuが未亡人の着る白い服を身にまとって、ラジオからMansoorに贈る歌が流れて来るところなど涙を禁じ得ないのであるが、そのあと流れる二人の心が溶け合った友達の結婚式の場面での歌「Sweetheart」が余計に悲しみを掘り下げて来るという演出。


Kedarnathの風景は素敵で「ウッタルカーンド、いつかは行ってみないとな」と旅心を刺激する作品でもある。
ただ、6000人もの命が失われて5年程度しか経っていないということは、いかに聖地といえども霊媒体質の人にはまだキツイかもしれない。(←なんのこっちゃ?)

チャイをめぐるやりとりの場面が印象的。

 

この映画を観ながら考えたことは「役目」について。
映画は2013年5月から6月の半ばまでのたった1ヶ月あまりのことが描かれている。この間に二人はめぐり逢い、恋に落ち、文字通り二つの世界へと引き裂かれる。なぜ二人は知り合ってしまったのか? MansoorはMukkuを救う「役目」を持ってこの世にやってきたのであり、その仕事が遂げられたので次の仕事を与えられるべくヘリコプターは「重量オーバー」であったのだろう。
人はみな「役目」を背負ってこの世にやってきている。
何度も死にかけ、何度も命を落としそうになってもまだこうして生息している自分のことを思うと
「いったい、何の役目がまだ済んでいないのだろう?」
はからずも考えさせられてしまうのであった。 

 

ロケ地:

ほぼ、ウッタルカーンド州にて。 

 

ロケ地
 Gaurikund (Uttarakhand)

標高1982mヒンドゥー教の巡礼スポット。村には温泉がわいていて、神さまに捧げられる緑色の池がある。

youtu.be

 

 

ロケ地
Ramgada (Rudraptayag, Uttarakhand)

 冒頭、Mansoorが巡礼客をお寺まで連れて行くシーンで。

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ロケ地
 Rinchauli (Rudraptayag, Uttarakhand)

 冒頭、Mansoorが巡礼客をお寺まで連れて行くシーンで。

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ロケ地
 Old Trek Route - Kedarnath (Rudraptayag, Uttarakhand)

冒頭、Mansoorが巡礼客をお寺まで連れて行くシーンで。

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ロケ地
Kedarnath Temple (Rudraptayag, Uttarakhand)

 冒頭、Mansoorが巡礼客をお寺まで連れて行くシーン、その後もコミュニティ会議、洪水の場面などでも出て来る。

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ロケ地
Chopta Village (Rudraptayag, Uttarakhand)

 「ミニ・スイス」と呼ばれる村で標高は2700m、常客となったMukkuとMansoorのやりとりのシーンで。 


 

この映画が観られるサイト:

Kedarnath (2018) Hindi in HD - Einthusan