Pad Man
ヒンディー映画「Pad Man」(2018)
配役:
Lakshmikant Chauhan役:Akshay Kumar
Pari Walia役:Sonam Kapoor
Gayatri Chauhan役:Radhika Apte
Tinku's mother役:Riva Bubber
Savitri役:Urmila Mahanta
発明賞表彰式のゲスト役:Amitabh Bachchan(特別出演)
冒頭の歌詞の「すっぱりひーろー」の連呼は「Super Hero」のこと。インドは書いてある通りに発音するのがお約束だ。「Gun(拳銃)」は「ぐん」であって「がん」ではない。オーストラリアの「とぅだい いず ぐっだい まいと(Today is good day, mate) 」と同じで慣れればなんということはないが、それまではインド英語は難しい……。
ネタバレしない程度のあらすじ:
Madhya Pradesh州の製鉄工場で働くLakshmiことLakshmikant Chauhan(アクシャイ・クマール)は、学はないけれど頭の回転が早く、器用なアイディアマン。新婚の愛妻Gayatri(ラーディカー・アープテー)が玉ネギを切って涙を流しているのを見れば、子供のオモチャを改良して自動玉ネギ刻み機を作るといった具合だ。
ある日、Gayatriが突然母屋から離れへと行ってしまい、不審に思ったLakshmiが後を追おうとすると家族が行くなと引き留める。聴く耳持たずでLakshmiが離れへ行ってみると、生理中の女性は不浄なので”隔離”されなければならず、生理期間中の女性に男性は触れてはいけないといった習慣を知る。またGayatriが布きれを生理用ナプキンのかわりに使い、その布切れを恥ずかしいのでサリーの下に隠して干し、太陽にもさらさないでいるという事実が判明。
そんなことをしていては病気になってしまうという近所の医師の意見もあり、Gayatriの身体を心配したLakshmiが薬局にナプキンを買いにいくも55ルピーと驚くほど高価だった。友達に15ルピーを借りてまで買って帰ったものの、Gayatriはそんな高価なものは使えないし、牛乳代にも事欠いてしまうから返品してくるようにと断る。買った薬局は返品を受け付けない店だったためラクシュミーは誰も使わない生理用ナプキンを見本に自作しようと、村で手に入る材料を「サンプル」としてタダで集める。
試行錯誤の末に試作品を完成させるも、試作品を使ってくれる人がいない。妻ですら家族への遠慮から使おうとせず、実の姉にも断られる。なんとか試作品を使ってもらおうと医学校の生徒にアプローチしているところを近所の人が見て、医学生と浮気していると勘違いされたり、近所の初潮を迎えた少女に試作品を提供しようとしたところ夜這いと勘違いされたりで、大変な騒ぎに。
辱しめを受けたとしてGayatriは迎えに来た実家からの人たちと去ってしまい、Lakshmiは村を出て生理用ナプキンの開発に情熱を注ぎ込む。
そんな折、ひょんなことから知り合い、試作品の初めての使用者となったPari(ソナム・カプール)の出現で思わぬ展開に……。
小僧的視点:
トイレの次は生理用品なのである。
昨年、「Toilet: Ek Prem Katha(2017)」でトイレの無い村にトイレを普及させる男を演じたAkshay Kumarが、今度は安価な生理用ナプキンの開発をする男を演じている。
確かに日本にもその昔、生理中の女性を”不浄”とする考え方はあった。同じくヒンドゥー教のバリでも生理中の女性や出産後間もない女性、怪我で流血している場合は男性でも女性でも神聖な寺院の境内に入れないというようなきまりはいまだにある。
ただ、このご時世に家で”隔離”って……。貧しい村とはいえ、『離れ』があるような裕福な家だからこそ出来ることで、それこそ家族6人が1部屋で暮らしているようなところは、表にベッド出して寝たりするんだろうかとか思ったり。夜、女性ひとりだけそんなことしたら、とてつもなく危ない気も……。
ただ、この映画、ゆるーく事実に基づいている。
モデルとなったのはタミル・ナードゥ州で安価な生理用ナプキンの製造と普及に尽力した社会活動家Arunachalam Muruganantham(アルナーチャラム・ムルガナンタム)で、この映画は主演のAkshay Kumarの妻で元女優、現在は執筆業にいそしみこの映画のプロデューサーもつとめるTwinkle Khanna(トウィンクル・カンナー)が、Arunachalamの人生から発想を得て書いた短編「The Legend of Lakshmi Prasad」の映画化だから。
いやはや、インドの衛生概念はいまだにこれほどかと思ってしまう。
Sonam Kapoorがスマートフォンを使っているので混乱するが、Arunachalam Murugananthamの話に基づいていると仮定すれば設定は2001年のはずだ。55ルピーも当時と今では違った意味を持っていたのかもしれない。
興味深かったのは55ルピーでは牛乳代を圧迫するから生理用ナプキンが使えないだの、とてつもない額だといっていたGayatriが宗教がらみのちゃちいからくり機械に51ルピーを出すことをなんとも思っていなかったこと。
衛生よりも宗教にお金をかけ、病気になっても死んでもいいから恥をかきたくないというインドの日常が上手く切り取られている。
シャツの裾をズボンにタックインするという小さな仕草が、そこかしこでさまざまな意味で繋がって来るきめ細やかさもいい。
ニューヨークからの飛行機の中、デリーの空港、空港からPariが父親と家に戻るシーンなど、上手い役者が演じていればもう少し胸が痛むところなのだが、Sonam Kapoorのダイコンっぷりがいい意味で功を奏してさらっと表現されているのも「不倫は絶対に許されません」のインド式思考に洗脳されている私には逆に好感がもてた。
色恋あり、ハッピーエンド、ちょっと少な目ではあるけれど初潮のお祝いの様子を描くシーンで踊りもある。
ロケ地:
撮影はMadhya Pradesh州、Delhi、アメリカのニューヨークにて。
Maheshwar (Madhya Pradesh)
どこのガートだろう? バラナシかな? と思って観ていたけれど、まわりの風景がちっともバラナシっぽくないのだ。
そう、川が違うのだ。ガンジス河ではなくてNarmada river(ナルマダー川)で、この川沿いにあるMaheshwarという町だった。
ヤギの血(もしくは撮影用の血糊?)とはいえ、血まみれでガンジス河へ飛び込んだらとんでもないブーイングに違いない。
Kalakund railway station (Madhya Pradesh)
The Delhi Indira Gandhi International Airport (Delhi)
ニューヨークから戻った時のちょっとせつないシーン。
The statue of Liberty (New York, USA)
Brooklyn Bridge (New York, USA)
Times Square (New York, USA)
相変わらず、シャツの裾出てる……。
Lincoln Center (New York, USA)
United Nations headquarter (New York, USA)
UNICEFでのカタコトの英語でのスピーチのシーン。
国連総本部内部での撮影、ボリウッド映画では”Half Girlfriend”に続いて2作目となる。
この映画が観られるサイト:
https://einthusan.tv/movie/watch/2bJx/?lang=hindi