ぼうけんこぞう

旅と冒険(回遊ともいう)の軌跡と映画

Mirzya

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ヒンディー映画「Mirzya」(2016)

配役:

Munish/Adil役:Harshvardhan Kapoor 
Suchitra役:Saiyami Kher
王子Karan役:Anuj Choudhry 
Zeenat役:Anjali Patil
Zeenatの父親役:Om Rajesh Puri
Suchitraの父親役:Art Malik
Karanの父親役:K. K. Raina
 


 ネタバレしない程度のあらすじ:

子供の頃、大人になってから、そして前世とこの映画は3つのタイムゾーンを行ったり来たりする。
前半部分はほぼこの動画を観れば理解できる。

 

Munish(ハルシュバルダン・カプール)とSuchitra(サイヤミ・ケール)はジョドプールにある学校のクラスメート。毎朝MunishがSuchitraを迎えに行き、二人で同じバスに乗って通っていた。
ある日、MunishをかばったSuchitraが罰として教師に鞭打たれるのを見たMunishは怒りを抑えきれず、警察官であるSuchitraの父親の銃を持ち出して教師を射殺してしまう。Munishは少年院に送られ、Suchitraはロンドンに留学して二人は離れ離れになてしまう。

時は流れ、Suchitraは婚約者の王子Karan(アヌジュ・チョウドゥリー)と結婚するために、ロンドンから帰国。結婚前に乗馬を習いたいというSuchitraを連れて馬場に行ったKaranは厩務員のAdilをコーチに付ける。

Suchitraは子供の時につけた背中のタトゥー(入れ墨)からAdilがMunishであることを知り、二人の間に愛の炎が再燃する。再燃といってもその炎は子供の時のものではなく、前世からのものだったのだ。
KaranとSuchitraの結婚式がまさに始まろうとする時、Adilは友人Zeenat(アンジャリ・パテル)の犠牲をもってSuchitraを連れ出すことに成功、迫りくるKaranとSuchitraの父親をかわしながら二人はパキスタン国境をめざし砂漠をバイクで走り抜け……。

 

小僧的視点:

映画は興行的に大コケだったようだが、映画とはこうあるべきという壮大なスケールでくり広げられる前世の部分と、砂漠の逃避行の映像が好きだ。
もとの話になっている「Mirza Sahiban」はパンジャブ地方に伝わる民話で、「Heer Ranjha」と「Sohni Mahiwal」に並ぶ悲劇である。

前世の部分はまさにこの「Mirza Sahiban」をなぞっているので、だいたいの話を書いておく。

Kheewaという村にKhewa Khanという男の子が生まれたが、産後すぐに母親が亡くなったため、Fateh Bibiという女の子を産んだばかりの近所に住む母親がKhewa Khanにお乳をやり、自分の息子として娘と同じように育てた。
Fateh Bibiの息子がMirzaで、Khewa Khanの娘がSahibaという主人公だ。

学童期になりMirzaの両親はKhewa Khanのもとに息子を送り、SahibaとMirzaは同じ学校でコーランを学ぶようになり徐々に恋が芽生える。Mirzaは弓と乗馬が得意で、Sahibaは美しく成長する。MirzaはSahibaなしには生きていけないようになるが、それがSahibaの両親にバレてMirzaは両親のところへ送り返され、すぐさまSahibaとTahir Khanという男性との結婚がとりおこなわれることになった。
それをきいたMirzaは弓をもって馬にまたがり、結婚式の当日、まさに結婚の儀が始まろうとするところに現れ、Sahibaの手をとり馬に乗せて走り去った。
結婚式会場は大騒ぎになり、兄や従兄弟達が馬にのってふたりをさがしはじめる。
やっと安全なところまで逃げ、二人は木陰にへたりこむ。Sahibaはどうしたらいいか逡巡していた。もし、探しに来た兄たちが二人を見つければ、弓の名手であるMirzaの矢で兄が射られてしまうだろう。矢がなければ血を流さなくてすむ。兄もきっと許してくれると考えたSahibaはMirzaが眠っている間に矢筒の中の矢をすべて二つに折ってしまった。

そこへSahibaの兄が現れ、Mirzaの喉元を射る。矢筒の中をさぐったMirzaはバラバラになった矢を発見してSahibaを見つめるが、そこへ次の矢が飛んできてMirzaの胸を射ぬく。Mirzaを射抜いた矢尻に覆いかぶさるようにして、Sahibaも絶命した。

なんでパンジャブ地方に悲劇の恋愛話がたくさんあるのか、とても不思議だ。

新人のHarshvardhan KapoorはAnil Kapoor の息子でSonam Kapoorの弟、これがデビュー作。Saiyami KherはTabuの親戚で、テルグ映画の出演経験はあったが、ヒンディー映画としてはこれがデビュー作だ。
両人ともに新人とは思えぬ存在感があるのだが、潜在的愛くるしさ、りりしさが男女逆なのである。
だから、Harshvardhan KapoorがAdilの時はいいのだけれど、Mirzaになると頑張ってはいるのだけれど愛くるしさが出てしまって「うーん、なんだかなぁ」になってしまう。逆にSaiyami Kherは、Suchitraの時はそれなりのキャラなのだけれど、Sahibanになるとりりしすぎてこれも、「うーん、なんだかなぁ」なのだ。
新人デビュータントにそこまでの演じ分けを期待するのはいかんせん可哀そうなので、いわばミスキャストといえるのではないだろうか。
私は馬にも乗るしアーチェリーも習ったことがあるのだが、早馬に乗りつつああも恰好よく矢を射るのは並大抵なことではない。デリーで半年あまりまず馬を操る訓練をしたというHarshvardhanは、良いスキルを身に着けたと思う。今後の仕事に役立つといいなと思う。

ロケ地  

撮影はジャンムーカシミール地方とラジャスタン州にて。どうやら Rakeysh Omprakash Mehra(ラケーシュ・オムプラカーシュ・メヘラ)監督は「いままでボリウッド映画界で撮られていない場所」というのにこだわってロケ地を探したようで、中国寄りの辺境ラダックとジャイサルメールを超えたパキスタン寄りの辺境が選ばれている。

 

ロケ地
Nubra Valley (Ladakh, Jammu Kashmir)

前世のシーン。
ヌブラでなら誰か撮影していそうなものだと思ったのだけれど、どうやらラダックにおけるモンスーンシーズンの撮影をしたのがはじめてなのらしい。

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6月でも雪降って恐ろしく寒かったのに、モンスーンシーズンにこんな格好でウロウロしてたら、風邪引くっちゅーに(ひとりごと)


 

ロケ地
Pahalgam Lake (Ladakh, Jammu Kashmir)

前世シーンで川ではなくて湖が写っているのはここ。確かにPangon湖はいろんな映画の撮影が行われているが、Pahalgamはなかったかもしれない。
でも、美しさはPangonの勝ち(←勝ち負けの問題かよ!)

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ロケ地
Mehrangarh Fort (Jodhpur)

Suchitraが海外留学のため、ジョドプールから去るシーン。奥に見えるのがMehrangarh。

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こうして自転車に乗ったMunishとSuchitraが風になっていたのも、Mehrangarhの入口の坂。

 

ロケ地
Blue City (Jodhpur)

正体を見破られたAdilが訪ねたのがメヘランガー砦、眼下に広がるのが青い町ことジョドプールの街並みだ。
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ロケ地
Shiv Niwas Palace (Udaipur)

Karanの家のシーン。ウダイプールいち美しいがウダイプールいちお値段も高級なShiv Niwas Palaceのプールサイドf:id:bokenkozo:20180615224901j:plain

 

ロケ地
Jag Mandir Palace (Udaipur)

 湖の中に浮かぶ宮殿ホテルのプールサイド

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ロケ地
Shikharbadi Palace (Udaipur)

Udaipurから5kmほどのところにあり、アラバリ山が望める。もともとはメワール王国のロイヤルファミリーが象に乗って豹やライオンの狩猟をするために建てられたもの。乗馬のシーンや厩舎のシーンはここ。

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Aave re Hitchki

 

馬場で通り過ぎる少年が口ずさんでおり、馬に乗っていた白人女性が訊ねた歌が「AAVE RE HITCHKI」
「Hitchki」とはしゃっくりのこと。
しゃっくりとは乾燥すると出るともいわれているけれど、誰かがその人のことを想うと、想われた人がしゃっくりすると信じられている。動画の後半に出て来る村の女性がしゃっくりして嬉しそうにしているのは、砂漠に働きに行った男性が彼女のことを想っている……ということを知ってなのだ。
しゃっくりが出るくらい、空気だけでなく離れ離れになった二人の心が乾燥しているということになるのかもしれない。

 

 

ロケ地
Barmer, Phulia/ Thulia and Ranau (Jaisalmer Rajasthan)

 

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ラジャスタンでの現代のクライマックスシーン。 
記事によってPhuliaとかThuliaとか記載が違うのだが、どちらにしてもGoogleの地図にはないのでプロットできないがJaisalmerの果てのBarmerからさらに行ったほぼ国境の砂漠である。インド・パキスタン国境から17kmのところで、国境警備隊だけではなく諜報局の許可なくしては一般人が立ち入ることのできない場所。もちろん、そんなところで日が暮れたからといってキャンプをすることは許されず、スタッフは毎日90kmの道のりを通い観光局と軍の立ち合いのもと撮影をなしとげた。

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この映画が観られるサイト:

https://einthusan.tv/movie/watch/6Xd9/?lang=hindi

 

ここでもOK↓

www.youtube.com