Om-Dar-B-Dar
ヒンディー映画「Om-Dar-B-Dar」(1988)
配役:
Phoolkumari役:Anita Kanwar
Gayatri役:Gopi Desai
Jagdish役:Lalit Tiwari
Omの父親役:Lakshminarayan Shastri
Om役:Aditya Lakhia
若きOm役:Manish Gupta
Om-Dar-B-Dar l Official Trailer l Digitally Restored
ネタバレしない程度のあらすじ:
少年Omの自由闊達な青年期の物語、ラジャスタン州アジメールの生活が垣間見える。
物語はコメディーで始まり、スリラーで終わる。Omの父親は政府の役人の職を辞して、星占いに没頭。姉Gayatriは甲斐性ナシの男と付き合い、Omは科学を勉強するが魔術と宗教に惹かれていく。
小僧的視点:
ヒンズー教の3大神といえばブラフマー、ビシュヌ、シヴァ。世界はブラフマーによって創造され、ビシュヌによって維持され、シヴァによって破壊されることになっている。それぞれ、創造の神、維持の神、破壊の神となる。
インドで人気があるのはヴィシュヌとシヴァ、各地にお寺もあれば仏像やポスターもたくさん出回っている。一方ブラフマーはといえば、ラジャスタン州・プシュカルにインドで唯一祀るお寺があるのみ。人気がないにもホドがある……。
これほど人気がないのはブラフマーの妻であるサーヴィトリのせい。
ブラフマーが悪魔から守るために大規模な加持祈祷を行った際、供物を捧げる役目を担うブラフマーの妻サーヴィトリが折り悪く不在だったので、代わりにグジャール族の少女ガヤトリがブラフマーと結婚し、加持祈祷をとりおこなった。
このことに激怒したサーヴィトリが、「ブラフマーはプシュカル以外では崇拝されなくなる」という呪いをかけたのだ。
プシュカルのブラフマー寺院にはブラフマーとガイヤトリーが仲良く一緒に祀られているのに、サーヴィトリはサーヴィトリ山のてっぺんにある祠に祀られているのはこんな経緯があってのことか。
シヴァの妻であるサティが死んだときに、シヴァの流した涙で2つの池が出来たといわれている。ひとつはパキスタンにあるカタス・ラージ寺院の池であり、もう一つがプシュカルの町の真ん中にあるプシュカル湖である。
この湖が大変キレイなので、ここで撮影をしている映画がないかな? と思って探していたらこの映画がそれこそ唯一プシュカルで撮影されていたので、観てみたのだ。
前置きがいつもと違ってやけに長いので勘のよい人はお気づきかと思うが……結論からいうと、何がなんだかさっぱり理解できない許容範囲を超えたカルト映画だった。
ブラフマーが世界の創造の神であるにもかかわらず誰も信奉しないという、ヒンズー教からアイディアを得たブラフマー神の物語であり、 脚本は監督が見た夢や言葉で考えられないイメージをもとに書かれている。
……と聞いても、「え? ブラフマーの話だったの?」とキョトンとするのみである。
中性で抽象的、形而上的なヒンドゥー教の概念「ブラフマン」のことであれば、まぁなんとか呑み込めるけれど、ブラフマー神と言われると……。
「特徴を持たない普遍的な原則」であるブラフマンを擬人化して目に見える象徴としたものがブラフマー神だと仮定する説ならばわからなくもないが、やっぱり腑に落ちない。
商業的に公開されたことは一度もなく、映画祭に出品された作品であり、デジタル化にともない26年経ってから一般公開されたとはいえ
「うーーむ」
首ばかり捻ってしまう。
なのに、「Jab We Met」「Love Aaj Kal」「Tamasha」などのImtiaz Ali (イムティアズ・アリ)監督はこの映画から少なからぬ影響を受けたというし、Director Anurag Kashyap(アヌラグ・カシュヤップ)監督にいたっては、どこからどう聞いても調子っぱずれとしか言いようのない「Meri Jaan AAA Meri Jaan BBB」から
こんな曲やステージングを思いついてしまったという。
さすがゲージュツカは色んなものから色んなアイディアを取り込んで消化してしまうんだなぁと、妙に感心する次第である。
にしても、なんであんなに美しい湖があって、山があって、砂漠があるのに……誰もプシュカルで映画を撮らないのが、不思議で仕方がない。
Ajmer (Rajasthan)
Pushkar (Rajasthan)
この映画が観られるサイト:
https://einthusan.tv/movie/watch/4Sae/?lang=hindi#