ぼうけんこぞう

旅と冒険(回遊ともいう)の軌跡と映画

ミャンマーの強烈すぎる水掛けまつり

ミャンマー国民の89%が仏教徒で、仏教がらみの祝日にはさまざまなお祭りが催されて盛大にお祝い。ミャンマー人は大のお祭り好きなのだ。
中でもいちばん賑やかなのが1年で最も暑い毎年4月前後の「ミャンマー暦での新年」と、その前に全国で催される水かけ祭り「ティンジャン」だ。日本にも8月15日を中心に江戸三大祭りのひとつ富岡八幡宮の例祭「深川八幡祭り」という水かけ祭があるが、やはり日本がいちばん暑い時期に行われている。

ミャンマーの「ティンジャン」は基本、年末の3日間だけれど、事務所も学校もティンジャンの始まる前日から休日となるので、実際は4日間。
それもミャンマー独特の暦によって毎年違い、前年の10月頃に正式な翌年の暦が発表されるまで誰もいつなんだかよくわからないというシロモノである。

今年(2017年)の暦では
・12日(水)~16日(日) 水かけ祭
・17日(月)~21日(金) ミャンマーの新年
4月は12日~23日の12連休で、水かけ祭も5日間だった。

ちなみに来年(2018年)は
・13日 (金)~16日(月) 水かけ祭
・17日(火) Myanmar New Year (ミャンマーの新年)
4月13日~17日で5連休、水かけ祭も4日間。今年とはうってかわってお休みも随分短くなりそうだ。

タイでもバラモン陰暦の元旦にあたる日をはさんでの3日間、新暦の4月13日~15日にはソンクラーン」という旧正月を祝う水かけ祭がある。
偶然にもこの時期、タイのパタヤに居たことがあるのだが路上で子供たちが水鉄砲をかまえ、通り過ぎる時にピューッと水をかけてきてお互いにケラケラ笑って手を振り合う……のどかな感じであった。
そもそも4月はタイもいちばん暑い時期なので、涼が取れてちょうどいいのだ。

では、ミャンマーの水かけはといえば……それは、ウーベイン橋からはじまった。

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ウーベイン橋は古都・アマラプラの郊外にあるタウンタマン湖に架かる全長1.2kmのチーク材で出来た橋で、世界最長の木造の歩道橋だ。橋のたもとから渡りきるまでに20分ほどかかるのだが、真ん中にお休み処のような屋根のある場所がある。お休み処でひと休みしてもう少し行ってみようかとテロンコテロンコ歩き出した時だった。
ペットボトルのキャップをひねりつつ、前から同じようにテロンコテロンコ歩いてきた20代くらいのお兄ちゃんが、すぐ目の前で立ち止まったと思ったら私のおでこというか生え際のあたりにボトルの口をつけ、中の水をたらーっと注いできたのである。
うわぁぁぁ、なんだ、なんだ、なんだ!? シロダーラか?!
確かに「水かけ」ではあるのだけれど、こう来るとは思わなかったので目をまんまるにして立ち尽くしてしまった。
「ごめんね、悪く思わないでね!」
ニコニコしながらお兄ちゃんは歩き去っていった。
「今、そこで急にペットボトルから水注がれたぁー!」
即座にお休み処まで引き返し、休んでいたガイドさんに顛末を報告したところ
「水かけ祭はね、男の子と女の子の出会いの場でもあるから、可愛いなって思った子に男の子は水をかけに来るんだよ。だから、かけられたならタイプだって言われてるのと同じなんだから喜ばないと」
などと笑っていて、顔面びしょ濡れなのにちっとも同情されなかった。

本来というか、水かけ祭におけるミャンマーの”正しい”水のかけ方は、彫刻の飾りのついた銀製の鉢に入れた水を榊の木の葉の束につけ、訪れた人の肩などにふりかけるというものだったはず。
「ペットボトルで対面水かけとは進化したものだ」
などと思っていたら、さらなる進化が。

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ドラム缶のような形状のプラスチックの水がめに貯められている水を、ボウルやらバケツですくいあげては、道行く人や車にばしゃーっ。
車道で子供たちがこんなことしてて、危ないったらない。

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バイク乗りだって見逃してはもらえず、ばしゃーっ。
子供だけかと思ったらいい大人も……いい大人の水かけ部隊は少数でも的確に狙って来るので、これに遭ったら顔面だけでなく全身びしょ濡れである。

実は部隊、舞台も築くのだ。何かのイベント会場かと思わせるような舞台を設置、ズンジャカズンジャカ音楽をノリノリで流し、バケツと水鉄砲だけならまだしも

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消防車もびっくりな消火ホースでドバーッと水かけというより、放水してくるからたまらない。私くらいの細っちょいヤツなら飛びそうな水流により、びしょ濡れ通り越してズブ濡れである。
どんなかけ方をしても、水をかけるのはすべて相手に対する祝福、善意、尊敬のしるしということにはなっているのだけれど……天気の悪い日や山の方の高度のあるところだと暑いといっても22~23℃。おまけに夜の7時くらいまでは平気で水かけしているので、涼しいのに濡れネズミで寒くて風邪引きそうだった。
そんなわけでこの時期にミャンマーを旅するのは正直あまりお勧めできないが、どうしてもというのであればペラペラでフル丈の雨合羽が数十円で売られているので、チャイティーヨなどの高地へ行くのであれば購入するといい。
どうしたってびしょ濡れにはなるのだけれど、あるとないとではずいぶん違う。

強烈すぎるミャンマーの水かけ祭は楽しいを通り越して、ある意味危険であった。