ぼうけんこぞう

旅と冒険(回遊ともいう)の軌跡と映画

寿限無

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「名前が短くていいね」
メキシコ人の友達に言われたことがある。

メキシコでは試験などの際に、正式なフルネームを書かなければならない。自分の名の後に両親の姓名を記す。この両親の名前にもそれぞれ祖父母の名前が入っているので、正式の名前には都合4人の肉親の名前が入ることになる。
父(ホセ・ペドロ・マリア・ゴメス・ロドリゲス)と母(カルメン・フリオ・ローサ・ゴンザレス・ロペス)の間に生まれた子供はリカルド・ホセ・ペドロ・マリア・カルメン・フリオ・ローサ・ゴメス・ゴンザレス・ロペス・ロドリゲスという落語の「寿限無」も真っ青な長い名前なのだ。男性の名前にもマリアやカルメンという女性の名前が混ざるので、とてもややこしい。
アルファベット10文字以上の私の名前が特に短いわけではないけれど、普段の呼び名がリカルド・ロドリゲス君は、確かに私が3問目の答えを書こうとしている時にまだ自分の名前を懸命に書いていた。

反対に私の知っている限りで短い名前は、インドネシアの人だ。機内で入国書類にペンを走らせていると、
「すいません、私の分の入国書類も書いてもらえませんか?」
と隣の席のおばあちゃんから頼まれた。
「いいですよ」
快く引き受けたものの、このおばあちやんから預かったパスポート。名前の欄には『インダー』とある。インまでが姓でダーが名前なのかと思えば、姓名の区別はないらしい。「姓」、「名」と分けて書くようになっているので戸惑ったが、リカルド・ロドリゲス君はさぞかしインダーさんが羨ましいに違いない。

中国人の名前、概して中国大陸では姓名ともに1文字ずつで『李朋』『王傑』などの名前をよく見かけるが、台湾では『李登輝』『陳水扁』と3文字の名前がポピュラーなようだ。
結婚した女性によくあるのだが、ご主人の姓を自分の名前の上にくっつけてしまって、名前1つに姓2つ『林田鈴仔』と日本人と間違ってしまいそうな人も知っている。
中国人の姓で思いつくのは「陳」「李」『林』などの1文字の名字かもしれない。でも2文字の姓『司馬』、『欧陽』も忘れてはならない。欧陽菲菲という名前に聞き覚えのある人も少なくないはずだ。

友人の東海林紀美子さんと欧陽家のご子息が結婚することになった。彼女の名前はそれでなくても長いのに、欲張って(ご主人の名前を冠せず、自分の名前だけで役所に屈けることも出来る〉ご主人の名前まで貫ってしまったから大変『欧陽東海林紀美子』という中国大陸の人からみたら4人分の名前が出来上がった。
『中華圏にはメキシコのように名前を連ねる習慣が無くて、本当に良かった』
欧陽東海林紀美子さんの子供“寿限無2世”の代わりに、ホッと胸を撫で下ろしたものの……画数でいうとどっちもどっち?