ぼうけんこぞう

旅と冒険(回遊ともいう)の軌跡と映画

電車は社交場? 台湾莒光號のススメ

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台湾の鉄道駅には、日本のように駅名が大きく表示されていない。ホームの柱にほんの小さなブリキの看板がかかげられているだけ。
乗降口も1輌に2つしかないから、特に小さな駅では降りるとなったら、前々からスタンバイしていないと降ろしてもらえない。
だから自強號という特急でも、
「次の駅はどこ?」
周りの人に駅名を確認するのはごくあたりまえのこと。

でも台湾人は人なつっこいから、私の日本語訛りの中国語を聞き逃さず
「あんた、土地のもんじゃないね? どっから来た?」
なんて粗削りな日本語がおばちゃんから返って来て、世間話が始まることも少なくない。

大学で人間関係学を専攻している大学生と話し込んで、降りるはずの駅を2人して乗り過ごしたこともあるし、ウィーン少年合唱団のファンという女の子達に囲まれて写真を見せてもらっているうちに、本屋へ行こうとしていた私の予定がウィーン少年合唱団の音楽会行きに塗り替えらるハメになったこともある。
こうして友達になった人達と電話番号を交換して、後日出掛けたりすることで私の台湾生活は少しずつ広がっていった。

1996年の秋からは南アフリカ製の「新自強號」なる電車が登場。時速130キロで台北-高雄間を3時間40分でひた走る。今まで時速110キロで4時間半かかっていたのだから1時間近くも短縮となった。
車内には電光掲示板で次の駅を示すシステムもある。車内放送は今までの北京語、台湾語に加えて客家語と英語の4種類。
わざわざ次の駅をまわりの人に確かめる手間もないし、乗り過ごしたりすることもなく、大変便利なことには違いない。
でも、電車を社交場と勘違いして来た私には少し寂しい。

今までの自強號は「莒光號」と特急のランクを一つさげて、やはり市民に憩いの場を提供してくれている。
何がなんでも早く着きたい人はともかく、台湾独特の人情味を味わうなら莒光號がオススメだ。
乗客とカタコトの中国語や英語でいつの間にか話がはずみ、楽しい土産話をたくさん持って帰ることになるだろう。