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ヒンディー映画「Gadar Ek Prem Katha」(2001)

 

1947年の印パ分離独立『パーテーション』によりインド領でも、パキスタン領でもそれぞれの宗教に属する人々を排斥する暴動(というか殺戮)が発生し、その中で巡り会うイスラム教徒のサキーナーとシーク教徒のタラの話。
舞台はインド領とパキスタン領を行ったり来たりするのだけれど、ラクナウで撮影されたのはタラが「Hindustan Murdhabad(インドは死せよ!)」と宣言するように言われてそれはできないと言い返し、井戸の汲み上げポンプを引っこ抜いて大暴れするという超有名なシーン。
ラクナウではありながら、映画の中ではパキスタンということになっている。


小僧的視点:

有名なだけあってみんなこの映画のことは知っているのだけれど、そもそもこのシーンがどこで撮られたのかということを、現地ラクナウの人々が全く把握していないのには驚くのである。


Sunny Deol's Funny Gadar Scene | Bara Imambara Lucknow | Gutter Ek Prem Katha

ラクナウのことを色々調べている時に偶然目にしたこの動画。
バラ・イマンバラ内の Asfi mosque前で撮影されているのだが、ここでサニー・デオルが「Hindustan Murdhabad(インドは死せよ!)」と宣言するように言われて、井戸の取っ手を引っこ抜いたとか嘘ばっかり並べたあげく、ご丁寧にも中庭にある手で汲み上げる式の井戸まで見せたりしている。

なんちゃってロケ地
BARA IMAMBARA

 

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バラ・イマンバラは大規模な飢饉救済のプロジェクトのひとつとして、1784年にアワドの太守Asaf-ud-Daulaによって建てられた、シーア派の総合的で広大な宗教施設。
毎年ラクナウへ、「ムハッラム」という宗教祭を祝うためにやって来るイスラム教徒のための礼拝場所としても使われている。
写真のAsfi mosque、bhul-bhulaiyaと呼ばれる迷路、そして階段井戸などが敷地内にある。

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井戸へと続く階段

特にロケ地巡りとしてここを訪れたわけではないのだけれど、ぐるり見てまわってから帰ろうとすると、セキュリティーの人達に呼び止められた。
別に撮影禁止でもないし、イスラム寺院に入るための被り物もちゃんとしていたし、怒られる筋合いはゼロながらちょっと緊張。
よく話をきけば
「芳名帳にサインしろ」
ということらしい。
分厚いノートには外国人のみならず、インド各地からお越しのインド人たちが感想などを書いていた。ペンを渡されたので、「なんて素敵なところなんでしょう」と日本語で書いたが、これでは誰も読めないのであまりにも意味がないと思ってヒンズー語でも同じことを書いておいた。
おきまりの「どっから来たんだ?」「なにしに来た?」「名前はなんだ?」の攻撃を受けながら、世間話のつもりでこのセキュリティーの係の人に
「ねーねー、Gadar Ek Prem Kathaって映画知ってる?」
と話をしてみたところ、なんと
「あの映画はここで撮られたんだ」
などと言うではないか。すぐに食いついて
「え? どこのシーン?」
訊ねれば、かの有名な「Hindustan Murdhabad」のシーンだと、こともあろうにバラ・イマンバラのセキュリティーの係員が自信満々に言ってのけるのである。
「え? マジ?」
こうも現地の人に自信たっぷりに言われると、調べてきているとはいえ段々不安になって来るのである。

ただ、UP(ウッタルプラデーシュ州)の人というのはインドでも特に「”知らない”ということを、絶対に言わない人達である」という認識が私にはある。
中国人もかなり似たようなもので、道をきくと知らなくても絶対に知らないといわずに知っている知識のみでなんとか教えようとするので、結局観光客としては大いに迷うハメになるのだが、これと同じなのである。
以下の動画はいわゆるコメディーで役者さんが演じているのだが、「UPのヤツに道きくな」というタイトルは冗談ではなく、こんな感じである。


 

なので、鵜呑みにせずガイドさんと2人で
「そんなはずは、ない」
額を集めてパソコンをのぞき、繰り返し映画のシーンとバラ・イマンバラの写真をみくらべっこして
「やっぱり違うよね」
という結論に達して向かったのがフランス系の学校。

 

ロケ地
La Martiniere College

 

 

https://www.instagram.com/p/BYQponlHIX0/

まさしく、ココ!

逆行で凄いことになっているが、建物の前にはかの有名なシーンでタラとサキーナーと息子の3人が登ってくるこの階段。
建物を背にすると

https://www.instagram.com/p/BYRM29JHSXC/

こんな感じで、群衆が集っていたところだと思われる。
ただ、当時とはずいぶん違うし、写真ではわかりにくいけれど学校の建物全体が2015年に改装されたようで

https://www.instagram.com/p/BZUy1b9HDsA/

 

こんな感じの緑の縁どりがされている。
映画撮影当時、この縁取りがあったらやけにオシャレな感じで浮いたとは思うが、これはこれで「私は南フランスにでもいるのかしら?」と錯覚ができて楽しい。
ひとりで
「ここだよ、ここ!」
とかいいつつ校内で写真を撮っていると、授業の合間なのだろうか。通り過ぎる学生達が英語やフランス語で
「どこから来たの?」
「名前はなんていうの?」
きいてきて、うん、やっぱりここは南フランスではなくてインドなんだ……と現世の現実に引き戻されるのであった。

この映画が観られるサイト:

https://einthusan.tv/movie/watch/0633/?lang=hindi