ぼうけんこぞう

旅と冒険(回遊ともいう)の軌跡と映画

インド映画ロケ地巡り Paheli

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ヒンディー映画「Paheli」(2005)

配役:

Kishanlal/ Prem(幽霊)役:Shah Rukh Khan
Gajrobai役:Juhi Chawla
Lachchi役:Rani Mukerji
Bhanwarlal(Kishanlalの父)役:Anupam Kher
Sunderlal(Kishanlalの叔父)役:Sunil Shetty
Gadariya役:Amitabh Bachchan

最近の映画「FAN」ではShah Rukh Khanが本人とファンの1人2役だったけれど、このPAHELIのShah Rukh KhanはRani Mukerjiの夫とRani Mukerjiと恋に落ちる幽霊(精霊?)との1人2役。

ネタバレしない程度のあらすじ:

美しいラージャスタン人のLachchi(ラニー・ムカルジー)は、ナワルガルの豪商Bhanwarlal(アヌパム・ケール)の息子Kishanlal(シャールク・カーン)と結婚するも、Kishanlalは金勘定にしか興味がない。結婚式の翌日、7年に1度の吉日だからと5年間の予定で商売のためにLachchiを残して旅に出る。嫁ぎ先に残され無事に帰るともわからないKishanlalを待つことになったLachchiは悲嘆に暮れる。
そこへ、Lachchiの美しさに一目惚れした幽霊がKishanlalに化けて家にやって来る。幽霊は巧みにKishanlalの父を言いくるめて家におさまり、Lachchiは大喜び。幽霊は自分が本当は夫ではなく幽霊であることを、正直にLachchiに打ち明けるが、ラッチーは幽霊の愛と優しさに正体をしりながら幽霊を受け入れる。

恒例のラクダレースでKishanlalの家が出走させた2頭のラクダがレースに負けそうになると、幽霊は魔法を使って他のラクダを妨害して勝たせてしまう。
しかし、人々の目の前で魔法を使ったことをLachchiはよく思わず、また幽霊の正体がバレたら困るからと、これからは絶対に魔法を使わないよう幽霊に約束させる。

幽霊との同居から数年、Lachchiは幽霊の子供を宿す。お腹の中の子が女の子であることを祈って2人は名前を決めていたが、Lachchiが産気づいたそのとき、Kishanlalが家に帰って来てしまった。
幽霊とKishanlalという同じ顔、同じ風体の2人が鉢合わせし、家人を含め人々は困惑。Kishanlalは自分が本物であると必死に訴えるも、実の父親がそれを信じなかった。
そこで、マハーラージャーに判断してもらおうということになり、村の長老たちとKishanlalと幽霊は共に宮殿へ。

宮殿へ向かう途中、彼らは老羊飼いのGadariya(アミターブ・バッチャン)と出会う。Gadariyaは知恵を働かせ、どちらが本物のKishanlalかを見出そうとする。Gadariyaはまず、熱した石を取り出して「これを手で掴んだ者が本物だ」と言う。次に「羊を捕まえられた者が本物だ」と言う。そして最後に水袋を取り出して、「この袋の中に入った者がLachchiの夫だ」と言う。
袋は人間が入れるようなサイズではなく、その中に入るには魔法を使うしかないが、魔法を使わないというLachchiとの約束があった。
それでもLachchiに対する愛を試された幽霊は矢も楯もたまらず魔法を使い、袋の中に入ってしまう。
Gadariyaはすぐにその袋の口を閉めて幽霊を閉じ込め、本物のKishanlalを見定めたのである。

幽霊が閉じ込められてしまったことを聞いて悲しみにくれるLachchiだったが、夜、寝室にやって来たKishanlalに、幽霊だと知りながら幽霊と暮らしていたのだと告白する。
さて、Kishanlalはその話を聞いてLachchiに……?

小僧的視点:

題名の「Paheli」とは「なぞなぞ」の意味。原作はラジャスターン州に伝わる民話を基に書かれた小説、原作のラストはもっと悲しいようだが、ボリウッドの約束事・ハッピーエンドに変えられていてホッとする。
「あれ、こうやって幽霊と結婚して、最後にアムリトサルに行く映画を最近みたなぁ……」
思い出したのがPhillauriである。
幽霊なのか木の精なのか、男か女か、一目惚れするのか知らないうちになのかのかの違いはあるものの、インドには結構ある概念のようだ。 

人と幽霊の結婚生活というおとぎ話が繰り広げられるのは美しいフレスコ画が残るハヴェリ(邸宅)。映画はラジャスタン州・シェーカーワーティー地方のJhunjhunuという町近辺で45日間にわたって撮影されたという。

 地図の赤い印がハベリの場所。

シェーカーワーティー地方のナワルガルはAnandilal Poddar Haveli Nawalgarh(地図上紫色の印)をはじめかなり保存の良い状態のカラフルな壁画が残るハヴェリーがある場所でもある。
幽霊と出会う井戸はまったく違う地域にあるチャンドバオリだが、ファテープルの水なし階段井戸でも「Laaga Re Jal Laaga」といういう歌の撮影が行われている。 

あらすじの中で幽霊、幽霊と書いているが映画の中では「ブート(幽霊)」と呼ばれている。いわゆる「うらめしや~」的なものとは違って、Phillauriで出て来る木の精とか狐や狸のようなものと考えるとしっくりくる。
幽霊と人間でも子供って授かるんだなぁと思ったのだけれど、よく考えれば日本にも似たような話がある。

恋しくば尋ね来て見よ 和泉なる
信太の森のうらみ葛の葉

村上天皇の時代に河内国の石川悪右衛門が妻の病気をなおすため、兄の蘆屋道満の占いによって出た野狐の生き肝を狩るべく、和泉国和泉郡の信太の森(今の大阪府和泉市)に行く。
摂津国東生郡の安倍野(今の大阪府大阪市阿倍野区)に住んでいた安倍保名が信太の森を訪れた時、狩人に追われていた白狐を助けたのだが怪我を負ってしまう。
そこに葛の葉という女性現れ、保名を介抱して家まで送りとどける。葛の葉が保名を見舞っているうち、いつしか二人は恋に落ち、結婚して童子丸という子供をもうけた。
童子丸が5歳になった時、葛の葉の正体が実は保名に助けられた白狐であることがバレてしまう。全ては稲荷大明神(宇迦之御魂神)の仰せであると告白し、先の一首を残して葛の葉は信太の森へと帰っていった。

この5歳の童子丸がのちに陰陽師として名をはせる、安倍晴明なのである。
ということは、Lachchiと幽霊の娘も式神はべらして、今頃は妖術を使っているのだろうか……とか妄想していると、それはそれで大変に楽しいひとときになのである。

ロケ地
HAVELI (Nawalgarh Rajasthan)

 

https://www.instagram.com/p/BYZlG82H8Ua/

ナワルガルにあるハベリがShah Rukh Khan(以下、SRKと記す)の実家である商家として使われている。
SRKの家として登場するハヴェリはここだけではないようなのだが「Kangna Re」にはここが出て来る。

現在ホテルに改装中とのことだったので、そのうち泊まることが出来るようになるはずだ。

ハベリには最低でも3つの中庭がある。商売用、家族用、そして家畜用。豪商になれば商売用、男性用、女性用……と4つ、5つと中庭は増えていく。


ロケ地
STEPWELL (Fatehpur)

 

Rani Mukerjiが幽霊と出会う井戸はチャンドバオリでシェカワティ地方にはないのだけれど、ファテープルにある水なし階段井戸で「Laaga Re Jal Laaga」といういう歌の撮影が行われたというので行ってみた。
地図を見ての通りこのファテープルは、あの(←どのだよ!)「ファテープル・シクリ」とは別物で何の関係もない。
1451年にファテー・ハンによって創られたのでファテー+プル(町)=ファテーさんの町という名前になっている。「ハン」という名字を見ても分かるとおり創設者はモスリムであったが、その後ラジプート族の領主に引き継がれて今に至っている。
詳細な街の地図を手に入れられなかったので、町の人に訊ね訊ね行ったのだが、みんなクチをそろえて
「井戸なんかない」
というのである。

いや、こんな大きな井戸がないわけがないだろうとしつこく訊いて回ると
「ないんじゃなくて、もうなくなった」
などと言うのである。井戸が枯れるのならわかるが「なくなった」とはどういうことなんだ?
諦めきれずに町の人に訊いてまわると、あるにはあるという。道が狭いのでドライバーも四苦八苦であったが、なんとか横付けしてもらったのがここ。

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ゴミ捨て放題の荒れ放題。鉄の門が閉まっていて鍵もかかっていて
「えーっ、ここぉ?」
目を疑ってしまうのだが、青い看板にはヒンズー語でちゃんと「井戸」と書いてあるし説明書きも(読めないけど)あった。

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ゴミの山が写らないように、柵の隙間から一生懸命撮った写真がこれ。奥の下方向に建物っぽい、撮影現場が見えるような気がする。
……というわけで、「ファテープルのがっかり井戸」という名をつけ、後世まで語り継がれることになったとさ。よよよよ~(涙)


これで終わりだといかんせん哀しいので、シェカワティ地方ではないけれどジャイプールのロケ地を訪ねてみた。

ロケ地
NARAIN NIWAS

 



結婚式の歌「Minnat Kare」はジャイプールの今はホテルになっているナラヤン・ニワス・パレスで撮影されている。

https://www.instagram.com/p/BYyibJnHKzM/

 

ほぼ同じだ。
結婚式会場としても使われているようで自由に出入りOK。ホテルの客室はすべて地上階で庭に面していて、その素敵なお庭も散歩できる。この建物の奥がアンティークの飾り物がそこここにあるレストランなので、ドリンクを頼んでゆっくりすることもできる。
スタッフもがっつかない感じで放っておいてくれるので、居心地が良く、踊りまくる映画のシーンとはかけ離れた静かな憩いの空間である。

この映画が観られるサイト

https://einthusan.tv/movie/watch/5099/?lang=hindi