ぼうけんこぞう

旅と冒険(回遊ともいう)の軌跡と映画

プシュカル、おいてけぼり

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アジメール空港が『開く開く詐欺』でなかなかオープンしないので、仕方なくジャイプールとプシュカルをバスで往復することにした。

このバスはジャイプールとプシュカルをダイレクトに結んでいて、ジャイプールのシンディ・キャンプバススタンドからちょっと行ったところにあるJeiambayという旅行会社の前を朝9:30に出発する。網棚に載らない荷物はトランクに入れろと言われて手数料(なのか?)10ルピー取られるが、馬鹿デカイスーツケースを持ちこんだ私には安いもの。


ダイレクトとはいえ満席になるまであちこちに停まってお客を拾ってから高速に乗るので、集客状況によっては高速に乗るまでに結構な時間がかかったりする。
また、ダイレクトとは名ばかりで途中下車し放題だから、降りる人がいれば空いた席をなんとか埋めようとまた客引きをしながら走ることになる。
以前、エアコン無しに乗った時は途中でダーバと呼ばれるドライブインに停まってのトイレ休憩があったが、エアコン付きの場合はいわゆる公衆トイレの前で停まって行きたい人だけ行って全員揃ったら出発という具合だった。
どちらのバスも必ずアジメールに停まるのだが、エアコン無しの場合はここでほとんどの人が降りてしまい、満席になるまでかなり時間がかかる。
「早く出せよー!」
などと、お客さんからブーイングが出てしまうほど。運転手がブーイングに負けて出発させるも、道すがらアシスタントがお客を拾おうと声をかけながら行くのでこれまた結構な時間がかかり、ジャイプールでは
「3時間半でつく」
などと言われていても、結局4時間半くらいかかってしまうのもごく普通だ。

値段もエアコン付は400ルピー、なしでも250~300ルピー程度なのでエアコン付の方がずっとマシなのだけれど、冬場は普通に寒いためエアコン付バスの運行自体がない。

プシュカルからのバスは15:00発、1日1本だけなのでジャイプールを出る時にかっちり予約。チケットもちゃんとバッグにいれて、なくしてなんかいなかった。
14:30までには必ずバスの発着所であるAroma Royal Restaurant前に行けといわれたので、少し早めの14:10に行ったのにバスはすでに出発した後だった。
「えー! そんなはずは……」
まわりにたむろっている人達に、何時ごろバスが出発したのかときけば
「13:20くらいだったかなぁー」
という返事。
ムチャクチャやーん。それ、どうやっても取り残されるやーん。
飛行機じゃないんだから、出発時刻の1時間40分前にバス停行くアホおらんわ!
インチキ大阪弁で叫びたくなる。
これが、インドっちゃーインド。
うん、まさしくIncredible INDIA。

もう1晩プシュカルに泊まって、翌日仕切り直してもよかったのだけれど、この日、実はジャイプールに住む友人の誕生日だったのである。プレゼントも買ってあったし、誕生日祝いをする約束もしていたし、行かないとかいったら八つ裂きにされる。


アジメールまで行ってバスに乗り換えてもいいのだが、行き帰りダイレクトのバスで移動するつもりだったので馬鹿デカイスーツケースと二人連れ。
1人でスーツケースを引きずって、アジメールのバススタンドで「जयपुर」とヒンズー語で行き先が書かれたバスを探すのも簡単ではないし、アジメールからの「ダイレクトバス」がどれくらいダイレクトなのかというと、行きがああなのだから推して知るべし。何時間かかるやら、誕生日パーティーに間に合うかどうかの予想も出来ないのである。

途方に暮れていても仕方ないので、ジャイプールとプシュカルの知り合いを介して手配してもらったハイヤーで行くことに決めた。
2000ルピー+ドライバーのチップは、私にしたら膨大な出費であったが仕方ない。
まぁ、お金のことはこの際諦めるし、ジャイプールに戻ったらバスのチケットを売ったJeiambayに盛大にねじ込みにいって全額取り返すつもりだけれど、心配はドライバーに連れ去られないか? という点である。

無鉄砲なようで意外に用心深い私は、ヒッチハイクなどはもってのほか。知らない人が乗せてやるといっても乗らないし、宿の人がついでだから乗せて行ってやるといってくれてもかなり躊躇するクチ。
さらわれて売り飛ばされるほど外観に魅力があるとは思ってもいないけれども、私の内蔵はほぼ健全だからコワイのである。眠り薬を飲まされて、気付いたら腎臓が片一方なかったなんていうのは別に珍しい話ではない。

そんな私が知らない人の乗り物に乗せてもらったのは一度だけ。プシュカルのサービトリー寺院へ行った帰り、てくてく歩いていたら大雨が降ってきた。
「お金はいいから乗りなさい!」
声をかけてくれた、らくだが牽く天蓋付きの車(らくだタクシー?)みたいのには乗せてもらった。
なぜそんな無鉄砲なことをしたかといえば、らくだは持久力はあるが人が歩くくらいのスピードでしか進めない。何かあったら私の方が絶対に早く走れるという自信があったからである。

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らくだタクシー


ハイヤーに乗る前には、手配した旅行会社の名刺と車の写真を撮って
「今からこの車でジャイプールに向かうんだけどね、何かあったらちゃんと探して!」
インドの友人という友人に送り、それを受け取った友達が
「ドライバーの電話番号を訊け」
というので訊いて教えた。
こうして猜疑心バリバリで後部座席に乗り込んだのであるが、友人達が入れ替わり立ち替わりドライバーさんに30分おきくらいに電話をかけてきて
「今どこにいる? ちゃんと運転しなさいよ」
とかいうのものだから、ドライバーのAjayも苦笑い。
ながら運転はかえって危ないので、結局Ajayの電話を私が預かって
「うん、大丈夫、今どこどこ」
と私が答えていた。そのうちドライバーさんとインド映画と女優、俳優の話で盛り上がり、しまいにはボリウッド映画音楽をガンガンにかけつつ行くようなことに。
途中、トイレ休憩がてらレストランに寄ってお茶を飲んだ時に、どんな音楽が入ってるのか見たいというので携帯を渡してトイレに行った。
休憩後
「後部座席じゃなくて、助手席に座りなよ」
と言われ、言われるままに助手席に移ったら、今度はラジャスタン語講座が始まってまた盛り上がった。

あんなに疑ってかかっていたのにジャイプール市内に車が入る頃になったら、なんだか別れるのが残念な気分にさえなった。

数日後、Facebookで見たこともない、友達になった覚えもない、しかも名前が英語でもない「कुंवर अजय सिंह चौहान」なる人物から「いいね!」されてびっくりした。
「だ、誰なんだオマエは?」
プロフィール写真をみてみたら、なんとあのドライバーのAjayが知らぬ間に友達になっていたのである。
友達の友達でなければ友達申請も出来ない設定だし、友達の友達だったとしても顔を合わせたことのない人は承諾しないことにしているので、トイレに行っている間に私の携帯から自分に友達申請を送ったに違いない。
やるなぁ、Ajay。

今でも時々「いいね!」してくれるのだが、ものすごくノリノリだった3時間弱のドライブを思い出して、楽しい気分がよみがえってくる。

災い転じて福となるとは、こういうことを言うのであろう。