ラクナウの忘れ得ぬペンギン
インド・ウッタルプラデーシュ州の首都ラクナウに行った時のことだ。
Makhan Malaiというミルククリームから作った飲物をガイドさんに買ってもらって買い食いした。食べきらないうちにリキシャに乗るハメになったため、食べ終わったあとのプラスチック容器を
『どうしようかな、袋かなにかに入れて後で捨てたいけど袋とかないよなぁ……』
キョロキョロしていた。
「私によこしなさい」
ガイドさんが言うので『どうするんだろう?』と思いつつも渡したら、走っているリキシャからアスファルト敷きの道路の脇にポーンと投げ捨てたのである。
いや、それじゃ渡した意味ないし。素焼きのコップならまだしもそれプラスチックだし、土にかえるもなにもそもそも道路コンクリートだし……。
思った私に
「インドでは公共スペースは全部ゴミ箱です」
ガイドさん、にっこり笑って言うのである。
んー、数年前に首相のモディさんが日本に来て、ゴミが落ちてないことに感動してインドも真似するとか言ってなかったっけか?
思った矢先に今度はドライバーさんが、吸っていたタバコの吸い殻を道の脇にポーン。ハナかんだティッシュもポーイ。
うわわっ、環境とかいうまえにそれって衛生上ダメでしょ!
ジタバタしたくなるのだけれど、町中みんなこうなのでどうしようもないのである。
じゃ、ゴミ箱が一切ないのかというと、そんなことはない。観光地という観光地のそこかしこにちゃーんとある。
これはレジデンシーのゴミ箱。これだけみると
「へぇー、ラクノウのゴミ箱ってこんなんなんだ」
で済むかもしれないが、レジデンシーといえばインド大反乱の激戦地であったところで
いい感じに朽ち果てたところなのである。なのに、ここにこの
アホ面。
写真撮ってコイツが入ると、ずべて台無しなんである。
これはバラ・イマンバラにある階段井戸の写真。下まで降りて入って来た入口方向の写真を撮ろうとすると……
このアホ面全開のペンギンが、ぼかしてもぼかしてもアーチの右端のところに反対向きで立っているのが見えてしまう。
台無しだ。
だから結局、反対からしか写真は撮れないのである。反対から撮ったところで
指さしているガイドさんとドライバーさんが入ってしまっているのだが、まだ地元の人が入り込む方がアホ面ペンギンよりは1000倍マシなのである。
みんなが投げ捨てないように町中にあればいいものを、町中にはほとんど無いのに観光地には必ずあるペンギン型ゴミ箱。ぼかしたり、光で隠したりと……アホ面を見えなくするために、結構苦労を強いられる。
ただの円筒形にするとか、もう少し景観に合うような色合いにするとかは出来ないものなのだろうか。
そもそも、なぜラクノウでペンギンなのだろう? 本当に謎なのであるが、そんなことより
「インドでは公共スペースは全部ゴミ箱」
この概念をなんとかしないとマズかろうと思うわけである。