印度山日本寺
ブッダガヤのガイドさんから、厳重に言い渡されて許可された回遊タイム。
ブッダガヤには世界中のお寺がいろいろあり、ブータン寺で五体投地などの真似事などをしてから、懐かしい感じがする日本寺へ行ってみた。
日本寺の入口の門には、灯籠の頭みたいなのがついていて可愛い。
本堂はこんな感じ。かかっている表札？ が「寺本日」でちょっとウルドゥ語ちっくに右から左。
本堂の前の階段に座って、ただぼおっとする。
そこへやってきたアジア人の女の子と目が合う。アジアでよくやる顎をちょっとだけ上にあげる感じの挨拶を無言でしたら、
「どっから来たの？」
声をかけられた。
えーっと、私話しかけてないもんね。誰ともクチきかないようにっていうのは、現地の人ってことだけど、彼女絶対違うもん。
心の中で言い訳しつつ話をしてみると彼女は中国からの観光客。それはちょうどよかったと、英語と中国語のちゃんぽんでお喋りに花を咲かせた。
境内には宿泊施設のようなものがあり、子供達が暮らしながらそこで勉強する寺子屋っぽいシステムがある。
二人して階段から腰をあげ、本堂の中に入ってみた。南無妙法蓮華経の日蓮宗なだけに中はちょっと派手目だ。
本堂の中に書かれていた看板を見て吹いた。
寝ようと試みてはいけないけど、眠らなければごろんと横になってもいいってことだよね？
「静かにしてください」
はわかるけど、お寺で「気をつけろ」って言われても「何に？」ってききたくなる。
キツネとか、タヌキとかが出てばかされたりするとか？
印度山日本寺ツッコミどころ多すぎ！ 二人して笑いながら出口に向かうと、向こうから高校生みたいなインド人カップルがやってきた。
私は現地の人とクチをきいてはいけない身の上？なので、ただ通り過ぎようとしたのに、中国人の彼女がつかまった。
「ねぇねぇ、二人が私達と写真撮りたいって！」
別に写真撮るだけなら、クチきいてないからいっか……。
四人でかわりばんこに写真に映り、バイバイと手を振ってカップルとは別れた。
彼女も他に行きたいお寺があるというので、お寺の前の道でお互いの旅の安全を祈りつつ違う方向へ歩き出した。
ところが……
「小僧さん、これなんですか？」
夕食のためのピックアップに来たガイドさんに見せられたのは、日本寺であのカップルと私が映った写真だった。
「えーっ、なぜこれを持ってる？」
なんでもガイドさんの従兄弟があの新郎だったらしく、日本人と写真を撮ったからと見せに来たんだか、送ってきたんだそうだ。
悪事露見。
いや、悪事なんかではない。私は本当に現地の人とはクチきいてないのである。 「はい、チーズ！」
くらいはもしかしたら言ったかもしれないけど、写真撮りたいと言われた時も、新婚なんだと言われた時も『うん、うん』と首を縦に動かしただけだし、バイバイする時も手を振ってニコニコしただけだ。
ちっとも信じてくれないガイドさんからは
「知りませんからね、どっかに連れ去られて売られても」
ニヤニヤしつつも脅されるし、さんざんである。
以前、ラダックで
「ビハール人とウッタルプラデーシュ人は信用できない。カシミール人は賢すぎて騙されるから僕は信用しない」
などと、現地のザンスカール人から聞かされたことがある。
当のビハール人でさえ、ビハール人をまったく信用していないということがとてもよくわかるガイドさんの言いつけではあった。
