インド映画におけるラクナウ
ムガール帝国のお膝元 アワド藩王国・ラクナウ
藩王国とは族長や首長などが支配する部族国家で、英国統治下のインドで英国の保護国として存続したものを特にこう呼ぶ。
ラクナウは後に『セポイの反乱』と呼ばれる、最初の独立戦争『インド大反乱(Indian Mutiny)』の激戦地でもあった。
ラクナウ県460万人の人口のうち30%がイスラム教徒であり、インドのイスラム教徒が約14%であることを考えると、特にイスラム色が強い街だと言えよう。
そんな背景があってか、ボリウッド映画においては、登場人物のバックグラウンドがイスラム教だったりすると実際に映画がそこで撮られていなくても、ラクナウが舞台として設定されることもある。
ラクナウが舞台になった映画(Films set in Lucknow)
これを見てみると、たとえば「Ae Dil Hai Mushkil」はAli(ファワッド・カーン)とAlizeh(アヌシュカ・シャルマ-)の結婚式がラクナウで行われたことになっているが、
ラクナウで撮影が行われた映画(Films shot in Lucknow)
を見ると、撮影自体はラクナウで行われていないことがわかる。
こんな具合だ。
「Gadar: Ek Prem Katha」のように、逆のバージョンもある。
1947年の印パ分離独立『パーテーション』によりインド領でも、パキスタン領でもそれぞれ自分たちと違う宗教に属する人々を排斥する暴動(というか殺戮)が発生、その中で惹かれあうモスリム教徒のSakeena(アミーシャ・パテル)とシーク教徒のTara Singh(サニー・ディオル)の話だ。
二人はインド領とパキスタン領を行ったり来たりするのだけれど、ラクナウのLa Martiniere Collegeで撮影されたのは、タラが
「Hindustan Murdhabad(インドは死せよ!)」
と宣言するよう、ラホールにて迫られる超有名なシーン。
ラクナウだけどパキスタンということにしておこうという設定だ。
「なんでラクナウをパキスタンに見立てちゃうんだろう? パキスタンなんか、インドのすぐ隣なんだから行って撮影すればいいじゃーん」
と、お隣の国・韓国にロケにいく感覚で日本人だから思ってしまうけれど、そういうことじゃないんだよねというのが、史実に基づいているとはいえショッキングすぎて怖じ気づいたこの映画の冒頭部分を観ると、私でも理解できたりするのである。