ぼうけんこぞう

旅と冒険(回遊ともいう)の軌跡と映画

インド映画ロケ地巡り PK

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ヒンディー映画「PK」(2014)

配役

PK役:Aamir Khan
Jagat ‘Jaggu’ Janani Sahni役:Anushka Sharma
Sarfaraz Yousaf役:Sushant Singh Rajput
Bajwa役:Boman Irani as Cherry
Tapasvi Maharaj役:Saurabh Shukla
Bhairon Singh役:Sanjay Dutt

ネタバレしない程度のあらすじ:

ベルギーの古都・ブルージュで、ボリウッ ドの大スター・であるアミターブ・バッチャンが父である高名な文学者で詩人のハリワンシュラーイ・バッチャンの詩を朗読する会が催された。
インドからの留学生Jaggu(アヌシュカ・シャルマ)は、ダフ屋が持つ最後の1枚の入場券をその場に居合わせた青年Sarfaraz(スシャント・シン・ラージプート)と奪い合うことに。これをきっかけに2人は意気投合、やがて恋に落ちる。

しかし、かたやイスラム、かたやヒンドゥーという宗教の違いからJagguの家族が二人の関係に猛反対。意を決したJagguはSarfarazに強引に結婚を迫るも、結婚式の当日Sarfarazは教会に現れなかった。

傷心のJagguは母国インドに戻り、デリーでテレビ局のリポーターとして働くようになる。
くだらないニュースばかりにうんざりしていたJagguはある日、黄色いヘルメットをかぶり、大きなラジカセをたすきがけにし、あらゆる宗教の飾りをつけ、地下鉄の駅で“神様をさがしています”と書いたチラシを配るPK(アーミル・カーン)を見かけて取材を開始する。

PKは宇宙船を呼ぶリモコンを盗まれて、自分の星に帰れなくなったため、神さまをさがしてお願いしたいと荒唐無稽なことを言う。はじめは作り話だと決めてかかっていたJagguだったが、PKが持つ他人の心を読むことのできる不思議な能力を目の当たりしてからはこれを信じるようになり、なんとかPKが自分の星に帰れるよう、Jagguはテレビ番組を使った大作戦を敢行する。

小僧的視点

ラダックに行った時に、ガイドさんとドライバーさんから熱烈推薦されたこの映画のテーマは、「神とは、そして宗教とはなんなのか?」という問いかけ、それを超えた愛、そして宇宙人の地球人への恋である。(←オイオイ、また乱暴だなどうも)
あらすじがいつものように偏向傾向にあり、JagguとSarfarazのことばかりこと細かに一生懸命書いているのは気のせいである。
Anushka Sharmaの隠れファンだからとか、垢抜けない感じでチャラくないSarfarazをSushant Singh Rajputが演じていたからということではまったくある。

当初、Sarfarazの候補にあがっていたのは Aamir Khanの甥Imran KhanやRanbir Kapoorだったが、最後にはSushantになった。Ranbir Kapoorが『上手い役者だとは思うが、なぜか好きになれない佐藤浩市状態』である私にとっては、大変喜ばしい(←なんのこっちゃ)
しかし、ベルギー・ブルージュで撮影されたイチャイチャ度が高くて楽しいChaar Kadamという曲のビデオは、前々から
「もしかして、Sushantって足短い?」
思ってはいたのだけれど、それがモロにバレる感じの仕上がりになっている。

この映画で私が一番好きなのは、言うまでもなくパキスタン大使館からテレビ局にかかってくるあの電話のシーンだ。
主役のPKまったく関係ないじゃん! とか言われても、私は別に気にしないのである。

せっかくだから、主人公のことに少しふれておこう。
主人公の名前PK。もともと住んでいた”星”にはそもそも名前というものが存在しなかったのだ。だから、人々から
「PK hai kya? (ピーケー・ヘ・キャー?)=PKなん?」
訊かれ続けたため、ついには自分の名前を『PK』をにしてしまったというもの。
PKはヒンディー語の『pi(呑ん)+ ke(でん)』から来ていて、『呑んでんの?』となるが、日本語の字幕では「ヨッパライ」となっていたようだ。

このPKが裸で首から大きなネックレスを下げて、宇宙船から降り立つのがインド・ラジャスタンの広大な荒地だ。
このあとラジカセを首から掛けた男性に、迎えを呼ぶためのリモコンであったネックレスを強奪されてしまう。服もなければお金もない、そもそもお金が何なのかもわからない。助けてくれる友達もいなければ、地球の言葉も話せない。
こっそり恋人達の車から洋服を失敬し、ラジャスタン風のスカートに男物のスーツ着てみたりして変な人っぷりを発揮。 PK の星では相手と手をつなぐことによって、相手の考えを自分に転送できる。PKは町の女性となんとか手をつなごうとするも、見ず知らずの男に手を握らせる女性がいるはずもない。
言葉がわからない PK が騒動を起こし、逃げているうちに車にはねられて記憶喪失に。運転していたのは音楽隊のBhairon Singh(サンジェイ・ダット)で、記憶が戻るまで客人としてもてなすことに。
言葉を覚えるために誰かの手を握らなければならないPKを娼館に連れて行き、娼婦の手をただただ握ること6時間。ついに PK はヒンディー語をマスター、Bhaironにリモコンを取り戻したいのだと話をすると
「盗まれたものはきっとデリーだ」
言われて、デリーを目指す。
……という出来事があって、Jagguとデリーで出会うわけだが、壁に壁画のある砂っぽいラジャスタンの町の風景が心に残って離れない。
この町に、とてつもなく行ってみたい(←何かの病気が!?)



さて、インドにはタタ財閥、リライアンス財閥、ビルラ財閥という3つの大きな財閥がある。ここから説明しないとンダワのハヴェリにたどりつかないのだ。

1.タタ財閥
タタはパールシー(ペルシャ人のこと)で、その昔イランを支配していたペルシャ帝国の国教はゾロアスター教。イランをイスラム教徒が支配するようになってゾロアスター教徒たちは異教の民として祖国を追われ、インドへと落ち延びてきた。東インド会社がインドに進出してきた際にはイギリス人の手先となってインド人支配に荷担し、今ではインドでも有数の富裕層となっている。

2.リライアンス財閥
2007年に『Guru』という映画にもなったディルバイ・アンバニが、イエメンのシェル石油のガソリンスタンドの給油係からセースルマンとなり、帰国後インドでポリエステル糸を扱う仕事をはじめ、跡継ぎの長男が繊維業から石油化学グループへ大胆な転換、リライアンス財閥となった。

3.ビルラ財閥
シェカワティ地方・ピラニ出身のマールワール(Marwar )商人シブ・ナラヤン・ビルラがインド大反乱のあと、ムンバイにて綿紡績にて成功をおさめ、その後金融、繊維、自動車と事業を拡大させたのがビルラ財閥。
インド独立運動の時には国民会議派を金銭的に支え、ガンジーが身を寄せていたのもデリーのビルラ邸で、1948年に暗殺されたのもビルラ邸の裏庭だった。
インド大企業の20%を占めるともいわれているマールワール商人は、痩せ地の多かった故郷ラジャスタンに見切りをつけて他国に行商に出かけていったのだ。
忍耐強くてねばり腰、利益追求に固執しまくるあたりユダヤ人とも並び称され、日本の近江商人に似ていると言う人もいる。

 

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デリーにあるラクシュミー・ナラヤン寺院 (Lakshmi Narayan Temple)はビルラ-財閥によるもの。

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ジャイプールにある白亜のビルラーテンプルもビルラ-財閥によるもの。

ビルラ財閥を成したマールワール(Marwar )商人の故郷シェカワティ地方は、西インドのグジャラート ~ デリー ~ イラン(ペルシャ)へと物資を運ぶ交易路の要衝であり、ケチで気が荒いと評判の? マールワール商人が儲かったお金で故郷にハヴェリ(邸宅)を建てまくり、鮮やかな壁画で飾りたてたという場所。

ただ、建てた本人のマールワール商人達は、ムンバイやコルカタやデリーといった便利な都市に住んでいるので、マンダワのハヴェリは地元の人が管理をしている。


そのマンダワで撮られたといって、まず誰でも思いつくのがこの映画。出演はAamir Khanと Anushka Sharmaだが、Bhairon Singh役のSanjay Duttという悪役として有名な役者さんが今回は「いい人」でいい味を出している。


映画『PK』予告編

 

ダンシングカー~上がワイシャツで下が女物のスカートというへんてこな格好をする、お金の使い方を極めるシーンなどがここで撮影されている。

ロケ地
Sneh Ram Ladia Haveli

 

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このあたりがよく出てくるのだが、なんだかさえないこんな場所が選ばれた理由が行ってみてわかった。

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画面の左側が映画に使われている場所なのだけれど、ここから左側だけがコンクリート打ちされていないのである。
宇宙船から沙漠に降り立ったPKが沙漠の真ん中にある町をウロウロする設定で、床がコンクリートでは確かに絵にならない。

このハベリは特に入場料はかからない。中も見せてくれるし、屋上まであがってまわりを見渡したり、骨董品が山と積んである中庭を見たりすることもできる。ただ、骨董品屋というかお土産屋が入口に向かって右側にあるため
「何も買わないの?」
的プレッシャーがかかる。

赤シャツを着てる人が、PKで役者さんとして登場しているというこのハヴェリのオーナー。Sanjay Duttと一緒にウェイター役で出ていたと本人は主張するのだが、私は覚えがない。
写真をピンで撮らせて欲しいと頼んだら、なぜか一緒にとるハメになった。
いや、そういうことじゃなかったんだが……まぁ、それもまたよしか。 

この映画が観られるサイト:

https://einthusan.tv/movie/watch/7090/?lang=hindi