ぼうけんこぞう

旅と冒険(回遊ともいう)の軌跡と映画

安宿街からコンノートプレイスへ格安で行く方法

https://www.instagram.com/p/BZn8GJ4nH0_/

 

実は私、とんでもない恐がりなんである。
「ぼうけんこぞう」などと名乗っているわりには、安宿もおっかないので普通宿にしか泊まれないし、バックパックを背負うと背中が痛くなるののでいつもゴロゴロ引きまわす式の荷物で旅をしていて、バックパッカーでさえもない。

そんな私がなぜかニューデリーの安宿街、パハール・ガンジに泊まることになった。理由はひとつ、一緒にインド映画三昧しようと約束していた友達の家が近かったから。
……だったのだが、肝心なその友人がおうちに不幸があって「今から実家に帰る!」と、慌てふためいて電話をしてきたのが、出発前夜。
急遽ガヤへ行くことにして航空チケットを手配したのだが、デリーのホテルはいまさらキャンセルも馬鹿馬鹿しいので、そのまま泊まったのである。
「いったい何をしに、私はデリー市内まで来たのやら?」
ではあるが、他の友達に連絡がついたので翌日食事をすることにした。

友人と会う約束をしたのは、コンノートプレイス。どうせヒマなので、テクりで行こうとクルタに身を固めて宿を出ると、さっそく
「なにじんだ?」
攻撃がはじまる。
昔はちゃんと日本人だと答えていたけれど、「本当のことを言うと、騙されたりボラれたりする」ということを学んできたので、この頃はたいてい嘘ばっかり言う。
チベットから来ました」
こういうと、他の国ではだいたいチベットがどこなんだかまぁわからないので、金持ちなんだか貧乏なんだかも理解できず「へぇ」で終わる。
ただし、インドでは「おお、中国人か!」と言われ、まぁそうなんだけどそうじゃないんだよ……と気持ちの上で大変ややこしくなる。
無視してもしてもうるさく付きまとうおじちゃんに、今回はこう答えた。
「レーから来ました」

レーといえばラダック、ラダックといえばインドの北の方の地方なのに
君みたいに一見してネパール人だとわかると騙される。コンノートプレイスにいくのか? コンノートプレイスには政府公認の観光案内所があるから、そこで地図を貰え」
初手からネパール人扱いをされて苦笑。
歩いて行く、友達に会いに行くっていってんのに、リキシャで行けとウルサイ。親切にもおじちゃんはリキシャを停めて交渉してくれ
「10ルピー、それ以上払ったらダメだからね」
と乗せられ、おじちゃんは見送ってくれた。
政府公認の観光案内所の前で停まったので、10ルピー払って降りる。リキシャの運転手が指差すまま、別に地図なんかいらないのだけれど、せっかくだから入ってみると政府公認の観光案内所はびっくりするほどきれいなオフィスだった。

「ハロー、ご機嫌いかが? 今日はなにをしてさしあげましょう?」
にこやかに対応する男性。
「別になにも用はないんだけどね、観光案内所だってきいたからこのあたりの地図を貰おうと思って」
「なるほど。インドでのこれからの予定は?」。
「このあとガヤへ行って、デリーに戻ってきたら日本に帰ります」
「では、ガヤへの飛行機の切符を手配してさしあげましょう」
「いや、もう持ってるから。ほら」
Eチケットを出してみせると、ちょっとイヤな顔をしつつも
「帰りの日本への飛行機を……」
とひるまない。
「いや、それもあるから」
日本からのインド往復のEチケットを出してみせ、たたみかけるように
「ガヤでは定宿があるし、帰りのデリーで泊まるホテルの予約もしてあるよ」
さっきまでハエが手をする足をするという感じだった男性が
「じゃぁ、何しに来たんだ?」
急にコワイ顔になった。
「なにしにもなにも、ここって観光案内所でしょ? 地図貰いに来たらいけないの?」
カチンと来て私が言いかえすと、帰れ! と言わんばかりに、地図をあろうことか投げてよこした。

「デリーの観光案内所は、なんて無礼なんだ! あんな観光案内所見たことない」
食事をしながら、事の顛末を話すと
「え? パハール・ガンジからコンノートプレイスまで10ルピーだったの? ありえないくらい安いよ」
インド人の友達にびっくりされた。
驚くポイントそこなのか! と思わないでもないが、ヒンズー語のできるインド人でも40~50ルピーは必要らしい。

不思議に思って調べてみたところ、これが悪名高きDTTDC(Delhi Tourism and Transportation Development Corporation)詐欺というものだとわかった。
最初のおじさん、リキシャ運転手、政府公認観光案内所という名の悪徳旅行会社は三つ巴で、法外な値段のツアーを押し売りする予定だったのだ。
何もかも手配済みで騙せなかったうえに地図まで持っていかれ、ニセ観光局の男性が怒ったのも合点がいく。
今回、詐欺だとわからなかったのでひどい観光局だと憤ったりもしたけれど、「安宿街からコンノートプレイスへ、リキシャで格安にて行く方法」ではある。
(ネギしょった鴨は確実にコンノートプレイスまで送り届けられるという利点もある)

2015年12月の冒険