ぼうけんこぞう

旅と冒険(回遊ともいう)の軌跡と映画

②”いい”加減な適当

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昔の香港の国旗

面接試験で印象に残っていることがある。面接試験の順番を待っている時、日本人はとかく、ちんまりと座って静かに待っているものだが、受験者を監督する男性がそんな私達に促した。
「みんな、どうして黙っているの?隣に居る人はもしかしたら、近い将来自分の同僚になるかもしれないんだよ。どんどんお喋りしなさい」 後に採用担当の人から聞いたのだが、こう言ったあと、会話を始めるかやはり黙ったままでいるかで、積極性を見るらしい。この採用担当というのも部長(マネージャー)級の人もいれば、乗務員の志望者が担ったりもするらしく、乗務を始める頃になると『背と体重を測ってくれた人』や、最終面接で『冗談を言い合った人』と同じ飛行機のメンバーとして乗り合わせ、とても身近な感じがする。
筆記試験とは別に適性試験というのもある。親元を離れ日本から一人香港に乗り込んで行く訳だから、あまり生真面目でも勤まらない。失敗に自分を責めてしまうタイプより『まっ、いいかぁ』くらいの、こう言うとちょっと語弊があるかもしれないけれど、いい加減で適当な人の方が向いている。

香港といえばイギリスの植民地。募集要項にも『極端な米語(アメリカ式英語)を話さないこと』とあり、英語を話す人のみが採用されているはずなのに、迎えに来た会社の人の英語は典型的な香港英語。しゃくり上げるような英国スタイルとは、似ても似つかない。香港英語は確かに米語ではないから、かまわないのだろうか?香港英語の中に、『エレベーター』『マンション』という米語は出て来ない。それぞれ『リフト』に『フラット』。それでも発音は広東語の影響から早口、しかもなげやりで表面的な感じである。語尾に『あー』の多い香港英語も、慣れてしまえば何ということはない。しかし東南アジア初体験の私には、全神経を集中させないと香港英語は聞き取れなかった。

イギリス、カナダ、ニュージーランド、オーストラリア、南アフリカから採用されているパイロット達(コクピットクルー)を除くと、自然なスピードで正統な英語を話すスチュワーデス(キャビンクルー)は、まずいないと思っていい。キャビンクルーは日本、韓国、台湾、香港、タイ、マレーシア、シンガポールインドネシア、フィリピン、インド、スリランカの11カ国から採用されていて、それぞれにこの国訛りの英語を話す。
面接、筆記、適性と全て英語で行われ、英語が分かって当たり前の新入社員がとまどうのは、実は英語ではなく『アジア訛り』なのである。一日も早く訛りの特徴を掴む柔軟な頭と、適当に理解するいい加減さがここでも必要とされる。